加湿器殺菌剤で95人死亡。韓国で起きた「家の中のセウォル号」事件とは
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THE HUFFINGTON POST 2016.05.06 UPDATE
10年前、ある小児科の医師が、当時は医学的に解明されていなかった十数人の小児間質性肺疾患の患者たちに会った。患者たちはその後、急激に症状が悪化して死んだ。間質性肺疾患は、原因は不明だがさほど発生率は高くなく、急激に症状が悪化することも珍しい。しかし、ありえないというわけではない。目の前で起きたことを信じるのが医師の仕事だ。彼はこの患者の命を脅かす「怪質」を前に真剣に悩み、科学的にアプローチしようとした。
加湿器の水を交換しないとカビや雑菌が増えます。そのため、加湿器の水に加える殺菌剤を発売したところ、殺菌剤の吸入により間質性肺炎が多発し、少なくとも95人が死亡、300人以上が後遺症に苦しんでいるという記事です。韓国での出来事ですが、日本でも考えさせられるところの多い出来事です。
この殺菌剤の成分は広く使われており、少なくとも人間の肌に触れる程度では問題はないようです。しかし加湿器に入れて吸入しても大丈夫かは不明のまま製造・販売されたようです。このように、新しい物質が広く使われ始めると、予期しなかった副作用がひそんでいる場合があります。多少の副作用があったとしても、それを補ってあまりある効果が期待できる場合は使い続けることもあるでしょう。「加湿器の水を交換する手間を省ける」という効果は「間質性肺炎を発症する」という副作用には見合わなかったということですね。それでは日本でも話題のもの、例えば水素水とか空間除菌グッズなどは、現時点では酷い副作用は無さそうですが、あなたにどんな利益をもたらすでしょうか?
間質性肺炎という滅多に起きない病気が多発したため、原因究明のために疫学調査が行われ、加湿器用殺菌剤が原因であると突き止められました。このように、悪い影響であれ良い影響であれ、人間の健康に対する影響があるかどうかを調べるには実験室で細胞や動物を相手に行う研究だけでは不十分で、疫学調査が必要になります。新しい健康食品やサプリメントなどを使用する前に、きちんとした疫学調査が行われたかを気にすることで、実は効果が無かったとか、酷い副作用が隠れていたということを避ける助けになるでしょう。
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