尾瀬功

愛知県がんセンター研究所 疫学･予防部 主任研究員 医師 博士（医学）

　サプリメントの選び方を紹介した記事です。そもそもサプリメントは不足する栄養素を補うためのものなので、自分に不足した栄養が何かを知る必要がありますが、不足した栄養素を知る方法については記事中で触れられていません。日本人での各種調査を見る限り、病気であったり極端な食事制限や偏食だったりする場合以外は、たいていの栄養素は不足していません。ですからサプリメントが効果のある人はあまり多くないと思います。また、栄養素によっては過剰にとると副作用のあるものもありますので、注意が必要です。

　サプリメントはなんとなく健康そうなイメージがあり、中身をよく吟味せずに選ばれていることが多いと思います。ですから、サプリメントの中にはどのようなものが入っているか見てみましょう。例として、ビタミン剤の成分を見てみます。サプリメントでは詳細な成分が公表されていないものもありますので、医薬品の添付文書を参照します。日本で認可された医薬品の添付文書は全て公開されており、用法用量、副作用、認可の根拠となる文献など様々なことが書いてあります。今回は例としてビタミンB1, B6, B12を含む薬をみてみます。これはサプリメントとしても同様のものが市販されています。添付文書は以下から見られます。
http://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/730612_3179102F1030_1_02
　これをみると、1錠が350mgあり、うちビタミンB1が10mg、B6が50mg、B12が0.25mg含まれています。それでは残り289.75mgは何かというと、錠剤の形を保ったり、色を付けたり、成分を安定させたりするための添加物になります。添付文書から一部を抜粋すると、タルク、ケイ酸アルミニウム、アラビアゴム末、酸化チタン、黄色5号などです。この薬では、錠剤のおおむね83％は目的とする成分以外の添加物というわけです。この薬の使用期限は3年間ですが、密封されているとは言え室温で3年間変質しないためには、こうしたいろいろな添加物が必要になるわけですね。
　添加物は医薬品や食料品の品質維持のために必要なもので、悪いものではありません。しかし食品に含まれる微量の添加物を気にしつつ、サプリメントを摂取するのは無意味だとわかると思います。本物の健康志向の人こそ、サプリメントの代わりに食品で栄養をとってはいかがでしょうか。