笹井浩行

東京都健康長寿医療センター研究所・主任研究員　博士（スポーツ医学）

ある人が高められる心拍数の最大値を最大心拍数と呼びます．その計算法，測定法，トレーニングとの関係等についてまとめた記事です．

（最大）心拍数をトレーニングの目安にする方法が紹介されていますが，言及されていない点で重要なポイントを解説しておきます．

心拍数は，負荷強度（例えばジョギングペースなど）とともに上昇します．しかし，負荷強度が一定の場合でも，運動時間が長くなり，発汗量が増えると，心拍数が徐々に上昇することが知られています．この現象を運動生理学ではcardiovascular driftとかcardiac driftと呼びます．

運動時間が長くなると，心臓が送り出す1拍あたりの血液量が頭打ちになったり，微減していく一方で，発汗による熱放散を促すために皮膚への血流量を増やす必要があります．それを心拍数を増やして補っているわけです．

トレーニング現場で考えると，設定した目標心拍数を維持し続け，長い時間運動していると，運動開始時の負荷強度よりも思いのほか低めで運動していることもあり得るということです．

トレーニングにおいて（最大）心拍数は多くの人にとって有用な指標になりますが，頼り過ぎないことが肝要です．