食事革命 vol. 4 白い砂糖を断つ。
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長友佑都の食事革命 2016.08.24 UPDATE
「このままの食事では、アスリートとしての武器にならない」 管理栄養士の石川三知さんにそう指摘され、僕は俄然やる気になった。食事についてもっと学ばなければという気持ちに火がついたのだ。 なにしろ昨シーズンは肩の脱臼、大腿屈筋群の負傷などのケガに悩まされ、思うようにパフォーマンスが発揮できなかった。今、食事でカラダの内側から変えなければ、コンディションは上がっていかないと実感したのだ。
サッカー選手の長友佑都氏が白砂糖を絶っていて、それが調子につながっているのではという記事。
この記事のよいところは、監修がついているという点です。巷の記事には、どこから引用されたのか不明な内容だけといったことが多いので、監修がついているのは好感が持てます。
しかしながら内容は残念です。
長友選手が、個人的にどう書こうが自由でよいと思います(本当に原文のままなら)。しかし内容的には突っ込みどころが多くなってしまっています。監修の石川三知という方は有名なアスリートの栄養管理などをしている方のようですが、こうした記事の監修は慣れていないのではと思います。
「砂糖は避けた方がよい」のはなぜかということについては、多くのメカニズムが考えられます。しかし、この文章、そして石川氏のコメントは、「血糖値が急に下がること」が理由と考えられると語っています。これは厄介です。
食事をした後、血糖値が食事をする前よりも下がってしまうことを「反応性低血糖」と呼びます。糖尿病の患者さんなどで血糖値が下がってしまうことが問題視され、さらに極端な食生活が注目されがちな昨今、研究領域でも話題になります。
しかし一般的にはほとんど問題視されません。血糖値の急降下は、急上昇の後に起きます。血糖の急上昇による悪影響と、急降下による悪影響と、区別することは、特別な臨床研究でない限り、不可能です。また糖分を摂取して、本当に低血糖といえるほどまで血糖値が下がる人は、一般的には多くありません。一般成人でほんの数%の人たちです。
砂糖を摂取するのがよくないのは臨床医学、疫学においてよく知られていますので、「摂らない方がよい」とするのはよいのですが、その理由として偏った内容を述べるのはよくありません。従って「急降下による悪影響」を強調する内容は不適切です。そのあたり、バランスよく書いてあればよい記事と思うのですが・・
「厄介です」と上述したのは、正しい内容の中にも、バランスを欠いた内容、私見が盛り込まれているからです。一般的に目にする記事で、「専門家らしい人」が書いた記事は、概ねこうした内容です。全ての内容がダメ、あるいは無難なら、コメントするのも簡単なのですが、いろいろな質の内容が混同してコメントも厄介になります。この記事のように、けっきょく砂糖を避けるという単純な結論の場合は問題もないのですが、行動を変えうる議論の激しい記事、たとえばがんの代替療法に関する記事など特に注意が必要です。
蛇足になりますが、記事の最後の注釈は、WHO(世界保健機構)が推奨する砂糖の摂取の上限は25グラムとあります。これは2000 kcal の食生活を送っている人の数字です。当然、スポーツ選手には当てはまりません。こうした「条件付きで正しい内容」も、厄介な事柄のひとつです。細かい数字で出せというのも困難ですので。
栄養の効果や数字を一種類で示すのは不可能です。限定した効果を述べる記事があればそれは懐疑的な視点で読むのがよいでしょう。
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近藤尚己
東京大学 大学院医学系研究科 健康教育・社会学分野 保健社会行動学分野 准教授 医師 社会疫学者
僕もこの記事気になりました。低血糖症、と「症」をつけるほど、の低血糖が糖尿病の治療中でない一般の人で起こることはほとんどないと思います。
一方で長友さんのようなアスリートにとってはもしかしたら一般人では問題にならないような血糖の速めの後下が試合のパフォーマンスにも影響する、という可能性もあるかもしれないなあ、と思いました。
この記事は糖分摂取しないことが誰にでもものすごく効果がありそうな感じの印象を与えてしまうので確かに要注意ですよね。もしかしたらこの雑誌の平均的な読者はアスリート級の人たちなのかもしれませんが。
普段の血糖制限がアスリートの試合などのパフォーマンスにどう影響を与えるのか、科学的に検証してほしいですね!
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Toshinari Watanabe
大変よく理解できました!
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