中田由夫

筑波大学 体育系 准教授 博士(体育科学)

サルを対象とした実験ではありますが、興味深い研究結果が報告されました。「カロリー制限によって寿命が延びる」という仮説に対して、異なる結果を報告していた2つの研究グループが、互いの実験を比べた結果、中高年のサルに限定して解析すると、「カロリー制限によって寿命が延びる」という結果が得られた、とのことです。

さて、このサルの実験結果、簡単にヒトに置き換えても良いでしょうか？マウスよりはヒトに近いサルの結果ではありますが、そのままヒトに適用するのはさすがにマズイような気がします。

では、同様の実験をヒトを対象にできるでしょうか？自由に食べる群とカロリー制限をする群を作って、10年も20年もその生活を続けてもらって、死亡数を比較するような研究になります。このような研究を計画した段階で、倫理委員会での審査を受けることになるのですが、おそらくはその委員会で承認が受けられず、実現には至らないと思います。

このように、ヒトを対象とした場合、どのような研究でも実施できる、ということはなく、多くの場合、倫理的に許容されない、という理由で実施できないことが多いのです。そう考えると、サルではありますが、このような研究はやはり重要で、「慎重に」ではありますが、ヒトへの応用も考えさせられる知見だと思います。