ニセ健康情報を摘発!英政府メディアの威力 〜日本人も使える「騙されない」9つの要点とは?〜
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東洋経済ONLINE 2017.06.21 UPDATE
海外では、政府機関や市民団体などが、メディアの間違った情報に対して即座に異議を唱えるような仕組みができつつあります。 イギリスの政府機関「国民保健サービス」のウェブサイト、NHS Choicesでは、「Behind the Headlines」というコーナーを設け、間違いを指摘したり、説明が足りない場合は補足したり、市民に届く情報のバイアスを是正すべく頑張っています。
<ナッジする記事の概要>
・イギリスのNHS(the National Health Service)という、国民へ保健サービスを提供している組織が、Web上などで公開された健康関連記事を読み解き、解説する取り組みを行っています。
・その取り組みの1つである「Behind the Headlines」では、公開された健康関連記事を9つのチェックポイントを用いて評価しています。
・このチェックポイントは、日本人が自国の健康関連記事を読み解く際にも活用できるのではないか、と紹介しています。
<本読者へのおすすめアクション>
この記事の中盤では、前述の『健康関連記事を読み解く際の9つのチェックポイント』が紹介されています。
今日の日本では、残念ながら、出典すら明記されていない健康関連記事が依然多く見られますので、まずは、
(1)『その記事は、科学的な調査に基づいているか』
を確認するだけでも、その記事の品質を判断するのに大変有効だと思います。
なぜなら、科学的な調査に基づいているかどうかが判断できない記事は、出典が記載されていません。
つまり、このような記事は、
「なにを基に書かれたのですか?」と読者から質問されても、
【答えられない】ことを意味しており、科学的根拠に基づいた記事ではないことを
自ら証明しているものと解釈していただいて良いかと思います。
(その他のチェックポイントは、一般の方には、レベルの高いものであったり、
むしろ、情報提供者側が留意すべき点も含まれています)
<阪本のコメント>
Web 上にある健康情報を安心して利用できるようになるためには、
提供側の自主規制なども必要ですが、それに任せきるだけでは不十分なのかもしれません。
ユーザー側である市民も、質の高いコンテンツに価値をおく文化を育てたり、
健康情報を選び取る力などのヘルスリテラシーを一般教養として身につけることも必要でしょう。
理想的には、記事の内容を読者個人が個別に吟味しなくてもよいよう、
健康関連記事が正しく管理され、第三者的な視点により、常にチェックが入るような
世の中になる必要があります。
なお、『世の中に溢れている健康情報の間違いを指摘したり、説明が足りない部分は補ったりと、市民に届く健康情報をより適切なものになるよう支援したい』という方向性は、ヘルスナッジと同様ですので、ヘルスナッジの運営者・関係者にとっても、参考になるのではないかと思いました。
<最後に、まとめ>
みなさんも知人との会話で得た情報について出処を確認することがあると思いますが、
健康関連記事を読む際には、同様に出典を確認するような習慣を身につけていかれると、よいのではないでしょうか?
【出典】
1. 本記事で照会されている健康関連記事を読み解く際の9つのチェックポイントのオリジナル記事はこちらです。
「How to read health news」Edited by NHS(Tuesday December 23 2014)
http://www.nhs.uk/news/Pages/Howtoreadarticlesabouthealthandhealthcare.aspx
2. 本記事で紹介されている「Behind the Headlines」のホームページ
http://www.nhs.uk/News/Pages/NewsIndex.aspx
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近藤尚己
東京大学 大学院医学系研究科 健康教育・社会学分野 保健社会行動学分野 准教授 医師 社会疫学者
これはいい記事ですね。
記事が出たその日のうちにコメントを出すというのはすごい。
9つのポイント、参考になります。個人では判断できないので、日本もヘルスナッジだけでなく厚労省のような公的機関が是非やってほしい。
(1)その記事は、科学的な調査に基づいているか
学術的な根拠(論文や医師への取材など)が書かれていない記事は、警戒を。
(2)その記事は、学会の要旨集がもとになっていないか
論文は、第三者の評価を経て発表の価値ありと認められて掲載される場合が多いが、学会は評価のステップがない。したがって、ずさんな内容も多く、学会発表の内容は警告には値しないのでパニックにならないように。
(3)調査研究は、人が対象か
動物が対象の場合には、人で効く可能性は非常に少ない。
(4)何人を対象にした研究か
多いほうが信憑性が高い。
(5)研究は、対照群が設定されているか
設定されていなければ、疑ってかかろう。
(6)記事で主張されていることが、本当に研究されたのか
往々にして、研究されていない。たとえば、トマトが心臓発作のリスクを低減する、という記事があったとして、よくよく研究内容を調べると、トマトが影響している可能性があるのは血圧だったりする。高血圧が心臓発作の原因の1つなので、トマト→血圧→心臓発作の3段論法になっているわけだが、トマトが直接的には心臓発作のリスクを低減するほどの効果を持つかどうかについて、まったく確認されていない。
(7)誰が研究費を支払いリードしたのか
企業研究がどうしても、その企業にとって都合のよい結果を導き出しがちなのは自明のこと。学術研究でもその傾向は明確なので、最近は厳しく検証されるようになってきている。
(8)メッセンジャーを責めないで
「Should you “shoot the messenger”?」と表現されている。これは、シェークスピアの戯曲『ヘンリー四世』にも出てくる有名なフレーズで、悪い知らせを持ってきた人に腹を立てるのはやめようね、というニュアンス。報道関係者だけでなく、研究者等、さまざまな関係者によって、問題が生じている。
(9)より詳しい情報をどのようにして得るか?
NHSのサイトで見つけてね。
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