子の虫歯、親の学歴で格差 成長につれ差が拡大 東北大
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Yahoo!ニュース 2017.07.02 UPDATE
子どもの虫歯の割合は、親の学歴によって差があり、子どもの成長につれて差が広がるという調査結果を、東北大の研究グループがまとめた。家庭環境によって健康格差が大きくなることを示しており、研究者は公的な支援の必要性を指摘している。
私たちの研究を、公衆衛生対策に結び付くような記事にしてくださり、ありがたく思います。いろいろなご質問をいただきますので、すこし解説をさせていただきます。
まず、学歴によって人は必ずこうなる、と断定する内容の研究ではありません。そして、学歴によって「知識や意欲が異なるから差が出る」と考えているわけでもありません。健康の格差は、「知っていてもやれない」“余裕の差”によって生じる部分が非常に大きいと考えられています。今時、歯みがきを知らない人、甘いものを食べすぎると虫歯になりやすくなることを知らない人はいないでしょう。しかしながら、知識を行動に移せるかどうかは、社会環境により大きな差があります。例えば、シングルマザーで、仕事が終わってから子どもを保育園に迎えに行き、帰宅してから夕食やお風呂の用意を一人でするような状況であれば、子どもの歯みがきを時間をかけて丁寧に行う時間を十分にとることは比較的難しくなると考えられます。一方専業主婦のいる家庭であれば、こうした時間をとることは比較的容易になるでしょう。歯科医院への定期健診も同様です。ぐずる子どもをひとり親で家事をしながらあやすのは難しいため、かわりにおやつをあげることは多くなるでしょう。こうした生活の中での、健康のことを第一に考えて実行するための余裕の差が、健康格差につながります。
実は誰しも、健康のことを常に第一にしているわけではありません。例えば、栄養バランスの良い朝食を毎日食べることは、良い生活習慣として推奨されています。しかし、前日が飲み会だったり残業が遅かったりして寝坊した場合、食パン1枚で仕事に行くようなこと、誰でも覚えはないでしょうか?そして、そのような朝でも、髪の毛の寝ぐせは直しませんか?そう、つまりこうした朝は、「健康的な朝食よりも、寝ぐせを優先」しているのです。一人暮らしかどうかで、こうした朝でも朝食を食べられる確率は変わるでしょう。こうした誰もが生活する中での余裕の差が、積もり積もって健康格差を生み出します。今回の研究では、「学歴」という指標を、生活の余裕の差を表す指標として用いています。
健康格差を解消するためには、生活の余裕の差に関係なく、誰でも恩恵が受けられる方法が効果的です。保育園や幼稚園、学校での介入は、どのような家庭の子どもにも恩恵があり、健康格差の解消に有用です。実際に、学校や園でのフッ化物洗口(歯みがきこと同じか薄い濃度のフッ化物の入った洗口剤でうがいをする方法)で健康格差が縮小されることが論文で示されています。
学歴を強調した、不謹慎な感じのする研究ではありますが、実は上記の要な背景があります。また、実態を示すエビデンスがなくては対策をとることは難しいため、こうした研究も必要だと考えています。
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