「糖質制限+ビタミンC」は「がん」の新たな治療法となり得るか?
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HealthPress 2017.07.20 UPDATE
糖質制限をすると血糖値は常に「空腹時血糖」に近いところで安定します。その結果、細胞は「糖質」ではなくて「脂肪酸(ケトン体)」をエネルギーとして効率よく使うようになります。 「ブドウ糖ではなくてケトン体こそが、我々の体の中の細胞がメインエネルギーとして利用していた物質である可能性が高い」 以上のことが糖質制限の普及とともに明らかになってきつつあります。
原文:http://healthpress.jp/2017/07/post-3067.html
ビタミンCの点滴療法と糖質制限食との併用に抗がん作用があるかもしれないという記事です。
まず抑えておかなければならないことが2点あります。
■ビタミンC点滴療法の抗がん作用を示した臨床研究はありません。
■糖質制限食の抗がん作用を示した臨床研究もありません。
(私が英語の論文を網羅的に調べた結果です。)
併用するとよいという事実は確認されていないので、この記事はその効果がある可能性を、生物学的な知見を基に綴っている記事です。
「こういうメカニズムの抗がん効果が考えられる。」
ということを述べています。
科学と医療の可能性を論じている記事といえます。さて、どんな科学の領域でも、宗教でもオカルトでも、ある可能性を論じることは問題とはいえません。
しかし、この記事によって点滴療法や糖質制限食に臨床医学的に抗がん作用があると誤解する人がいてはなりません。その誤解を避けるべく努力が成されていないどころか、あたかも可能性に充ちて誤解させるような内容なのは問題です。
例えば患者さんを目の前にして医師がある医療の可能性を述べるとします。その医療行為が医学的に実証されていないのであれば、そのエビデンスの欠如について触れないのは大問題です。その臨床現場で許されるべきではない行為がオンライン記事だからといって許されるとは考えられません。
まず冒頭から、誤解させない期待させない文言を述べるべきです。
「この記事に述べていることは筆者の個人的な意見・考察であり、
糖質制限食、ビタミンC点滴療法の抗がん効果は臨床では全く実証されておりません。」
といった文言でも足りないくらいでしょうか・・。
逆にいえば、そういった注意書きが冒頭にない医療の文章は信頼しない方がよいでしょう。
現在、厚生労働省は医療の広告について見直しを図っています。では広告とはいえない今回の記事はどうでしょうか?この現状と現状を改善する余地について、政府、メディアと医学・公衆衛生学界が協力して議論、研究を続けていくことを願っています。
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Junya Ono
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24867961
ビタミンC点滴療法の系統的レビューです。この他にアイオワ大の脳腫瘍患者に対する研究もありますが、いずれにせよビタミンC点滴療法で癌が縮小するとは言い難い、化学療法や放射線治療の効果が上がる可能性はある、副作用も減る可能性はある。安全性は高いといった程度でしょうか。
サンプル数も少ないしコントロール群もないので今後の研究には一応、注目しておきます。
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