風邪に抗生物質は効きません!

病気・医療

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favicons?domain=yomidr.yomiuri.co ヨミドクター 2018.01.16 UPDATE

厳しい寒さが続き、風邪がはやっています。医師にかかると抗生物質を出されることが多いのではないでしょうか。しかし、厚生労働省が作った薬の使用指針では「風邪(感冒)に抗生物質は使わない」と書かれています。風邪と抗生物質、どう考えたらよいのでしょうか。

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近藤尚己

東京大学 大学院医学系研究科 健康教育・社会学分野 保健社会行動学分野 准教授 医師 社会疫学者

患者さんが風邪をひいたときにお医者さんが抗生物質を処方する理由にはいくつかあると思います。

1、将来風邪をこじらせて、細菌に感染して、肺炎などを起こす恐れがあるので「念のため」出す

これはかなりご高齢の方や、もともとほかのご病気を持っていて、細菌感染への抵抗力がない場合などにあると思います。例えば重症の糖尿病やCOPD(タバコなどにより器官が細くなって呼吸がしづらくなる病気)などの患者さんです。

2、患者さんやそのご家族に頼まれて、本当は不要だと思いつつ出す

以前は小児科でよくあったと思います。今もあると思います。ご両親が、早く治してあげたい、早く治ってくれないと仕事など色々と差し支える、といった切羽詰まった思いから、お医者さんにお願いすることがあります。お医者さんもそれを受けとめて処方します。たくさんの患者さんが外来で待っている中、抗生物質は不要なことを説明する時間がない、という理由もあるかもしれません。

3、治療上はあまり必要ではないのだけれど、薬を出すと診療所の利益になるので出す

医師といえど要員や診療所を経営する以上は利益を確保する必要があります。倫理的にどうなの?という意見もあると思いますが、判断が微妙な状況の時に自分の都合のいいように解釈してしまうのは人間が誰でも持つ傾向です。「念のため抗生物質を出す」ことが法で禁止されていない以上、仕方のない面もあると思います。低価格で患者さんの治療をした方がお医者さんが褒められたり、経営的にも有利になるようなインセンティブ等の仕組みが必要だと思います。

無用な抗生物質をどんどん処方すれば、一定の確率で副作用の被害に会う患者さんが出ます。それ以上に、社会に強力な多剤耐性菌が出てしまうと、次に本当にその細菌に感染した時治療法がなくなてしまう、という懸念があります。みんなで無用な抗生剤の使用を減らさないと、人類や生き物全体への脅威となって将来降りかかってくる可能性があるのです。というより既にもう脅威となっていますが。。

ではどうするか。記事にあるように、診療の場でうまくお断りする勇気は大切ですね。薬を出したい医療者側の行動をうまく調整する仕組みも欲しいですね。

抗生剤のこの問題、最終的には政策で対応しないととなかなか追いつかない問題だと思います。

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