医療の問題は「誰が」悪いのか
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ダイヤモンドオンライン 2018.07.05 UPDATE
病床の削減、医師不足、医療費の高騰など、医療や医療費に関する報道が後を絶たない。 そうしたなかで、かつて財政破綻後の夕張に医師として赴任していた森田医師が、夕張および全国のデータ、さらに医療経済学的知見から見えてきたのは、医療経済の拡大が必ずしも健康と比例しない現実であった。最近、『医療経済の嘘』(ポプラ社)も上梓した森田医師が提唱する医療と経済のあるべき関係とは。最終回では医療経済の問題を解決する方法を提唱します。
この記事で著者の森田医師は、今の医療制度では有限な医療資源が無尽蔵に消費されてしまい、医療制度が破綻しかねないことを指摘した上で、「自分や家族に本当に必要な医療の量」を知るために、大病院を受診する前に「かかりつけ医」に相談することを推奨しています。
このように、「かかりつけ医」が最初に診療をおこない、より高度な医療機関や専門医への紹介の必要性を判断するような仕組みは「ゲートキーパー制」などと呼ばれています。イギリスやオーストラリアなど、このような仕組みが制度化されている国もある一方、日本の医療制度は、長らく「フリーアクセス」、つまり受診する医療機関を患者さんが自由に選べる仕組みになっていました。
しかし、効率的な医療提供体制を構築するためには、高度な医療機器や人員も充実した態勢を整えて診療を行う大病院と、中小病院や診療所所などとで役割分担を行わなければならないという考えから、最近では日本においても「かかりつけ医制度」を導入する動きが加速しています。例えば、2013年に発表された社会保障制度改革国民会議の報告書では、「緩やかなゲートキーパー機能」の導入を検討すべきだとしています。
現時点(平成30年7月時点)で大病院の受診前にかかりつけ医を受診することが必須とはなっていませんが、初診時に紹介状がない患者さんに対しては、一定額の費用を徴収することが義務づけられています(ただし、救急の患者さんなどは対象外です)。つまり、緩やかにゲートキーパー制度が導入されているのです。
今後、このような流れは加速する可能性があります。具体的には、ゲートキーパーの役割を果たす医療機関や医師を登録制にすることや、そのようなかかりつけ医に対するインセンティブを高めることなどが議論されています。しかし、医療者の中にも「フリーアクセスは堅持すべきで、ゲートキーパー制度を厳格に適用するべきではない」と考えている人も少なくありません。
限られたリソースを効率的に活用して、医療の質を高めていくためには、恐らくこのような仕組みが不可欠になるだろうと私自身は考えていますが、どのような仕組みや制度・政策であっても、その影響を予め完全に予測することは困難です。導入前には、予め他国の事例などを参照しつつ、導入後には、導入の影響を科学的に評価することが重要になります。
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