マスクでは新型コロナウィルスから完全に身を守ることはできない?
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ライフハッカー 2020.02.03 UPDATE
外科医のようにマスクをすることで、空気感染の危険性を少し軽減することはできますが、本当に自分の身を守るのに効果があるのでしょうか? 答えは何とも言えません。その理由をご説明しましょう。
こちらのニュースに限らず、マスクに関する情報についてデマが流れています。
ある医師が話をしたマスクは意味がない、効果は限定的といった話から、その情報をサポートするように、誤ったネット情報がかき集め、まとめられて、さらにマスクの誤った情報が大量に流れています。
私は、パンデミックへの備え方として昨年末にエビデンスを基に「マスクの品格」という本を出版しましたが、そこで予想したことが現実に起きてしまっています。
「マスクはウイルスをブロックできない」
マスクが注目される事件が起きると、N95マスクはウイルスを通す、ウイルスに対する防御効果が十分に実証されていないという表現で、いつの時代も都市伝説のように語られます。
N95マスク自体のフィルターは、0.075μm±0.02μmの粒径で試験されています。
ポイントは、N95マスクをただ単につけているだけで、マスクを着用した際に顔にフィットするように訓練をしていない点です。
顔にフィットしないようであれば、自分の顔に合うN95マスクを複数の中から選択しなければいけません。
N95マスクのウイルスに対する防御効果を検証した実験(RCT)では、個人ごとに合うマスクを選択して正しくマスクをフィットさせて着用できているという前提が検証されていません。
顔の隙間からウイルスは侵入します。
N95マスクにも様々な形があり、顔の骨格も年齢によっても異なります。特に平均的な日本人がアメリカ製の大きいN95マスクを付けても意味がありません。
この様に、マスクの効果を発揮させるには、あらかじめマスクを選択し自分の顔に合うマスクを知っておく必要があり、状況や目的に応じて使い分けなければいけません。
手洗いしかない、正しくつければサージカルマスクで防ぐことができるとか皆さんの思い込みで語っているとしか思いません。
もし、感染リスクのある人へ接触する人(例えば空港職員やバスガイドさん)が、N95マスクを正しく選択して、正しく着用していたら物理的にシャットアウトできる可能性があったでしょう。
医療現場で感染者の治療にあたるスタッフが着用しているN95マスクが意味ないと言い切ってしまうのはいかがでしょうか。
感染については、マスクだけで防ぐことができない部分もあり、標準対策が必要なのはいうまでもありませんが、物理的に吸引をシャットアウトできる、マスクの使用を諦めてはいけません。
なお、通常の衛生マスクやサージカルマスクでは、いくらフィルター性能が良くても、付け方を訓練しても顔にはフィットしないと言わざるを得ないので、今回の対策には不適格です。
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阪本 直人
筑波大学 医学医療系 地域医療教育学 講師
本文1行目、冒頭の文章中の『空気感染』は、誤訳です。
原文の記事の『respiratory infections』は、
『呼吸器感染症』と訳した方がよいと思います。
(全文はチェックはしておりません。この部分だけのコメントです)
この表記は、新型コロナウィルス(2019-nCoV)における感染経路に対する誤解を生じさせる恐れがあります。
そのため、本記事の『誤解のない表現』に対する評価は2としました。
(文章全体は、おおよそよい内容だけに残念です。)
新型コロナウィルス(2019-nCoV)については、
政府公式発表でも、飛沫感染と接触感染が主体とされています。
翻訳者と執筆者、編集責任者等の皆様の普段のご努力に対して敬意を表すとともにこの記載について連絡して見たいと思います。訂正された場合は、再評価させていただきます。
下記Lifehackerより抜粋・比較
<原文>Lifehackerより
Surgical-style face masks can slightly reduce the risk of transmitting respiratory infections, but are they really a good strategy for protecting yourself? Yes and no—here’s the deal.
<日本語訳>
外科医のようにマスクをすることで、空気感染の危険性を少し軽減することはできますが、本当に自分の身を守るのに効果があるのでしょうか?
Can a Surgical Mask Protect You From Coronavirus?
https://vitals.lifehacker.com/can-a-surgical-mask-protect-you-from-coronavirus-1841311686
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阪本 直人
筑波大学 医学医療系 地域医療教育学 講師
我々医療者が発言する際には、
これまで以上に、どの種類のマスクについて話しているのかなどについても、
より意識し、明示した上でヘルスコミュニケーションを行ってゆく必要がありますね。
マスクの【分類と種類】には、日本衛生材料工業連合会 全国マスク工業会
によると、
分類には、医療用マスク、家庭用マスク(=衛生マスク)などがあり、
医療用マスクの種類には、サージカル(外科用)マスク、N95マスクなどがあります。
サージカル(外科用)マスクは、『マスクを装着したヒトから排出される微生物を含む粒子が大気中に広がるのを防ぐ目的等で使用される』などの記載があります。
N95マスクについては、大西先生の記述をご参照ください。
<家庭用マスク(=衛生マスク)>について
紹介された記事にありますように、
・『マスクは自分のウィルスを(周囲へ)撒き散らさないためのもの』
・『人間の体液の飛沫からはある程度身を守ることはできます。(くしゃみや咳をした時に出る飛沫を想定)』
・『普通のマスク(阪本注釈:家庭用マスク)は隙間なく装着はできません。
したがって、マスクと肌の間を空気は簡単に通り抜けられ、・・・』
と記載されています。
そして、
・『日常生活の中で手に付着したウイルスを体内に取り込まないよう、
「石鹸などを使った手洗いの徹底が第一の対策」』
とも記載されています。
<N95マスク>について
まず、下記の大きさを比べてみましょう。
・インフルエンザウイルス:直径0.1μm程度
・N95マスクのフィルター:0.075μm±0.02μmの粒径で性能試験(NIOSH規格)
N95の95は、これを95%以上濾過できるという意味
この数字を見ていただければ、あとは“正しく使用できていれば“、
という絶対条件をクリアする必要があることはお分かりでしょう。
次に、N95マスクの性能を正しく発揮するためには、
大西先生の記述にもありますが、
・フィットチェック(年1回の定量フィットテストが推奨される)を
装着のたびに行い、適切な装着であることが確認されていること。
・取り外しの際に不用意にフィルター等に触らない。
など、取り扱いに習熟してはじめて効果を発揮します。
診療の際には、防護具(ゴーグル、感染対策用ガウン、手袋など)も用います。
ただし、N95マスクは、目が細かすぎることから長時間着けたまま日常生活を送るには息苦しいこともあり、N95マスクはあくまで特殊環境下で限定的に用いるもの(事実上、感染者に対する医療行為に限定)とされています。
以上
参考:
北海道薬剤師会公式サイトより
http://www.doyaku.or.jp/guidance/data/63.pdf
日本衛生材料工業連合会 全国マスク工業会 資料より
https://www.env.go.jp/air/osen/pm/info/cic/attach/briefing_h26-mat08.pdf
N95 Respirators and Surgical Masks
https://blogs.cdc.gov/niosh-science-blog/2009/10/14/n95/
(上記いずれも2020年2月6日閲覧)
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【医療者も一読の価値あり】
・マスクの品格 大西 一成 (著) 出版社: 幻冬舎 (2019/11/28)
(開示すべきCOI(Conflict of Interest)なし)
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