なぜ効果の検証されていないヒドロキシクロロキンがトランプの抗コロナウィルス「奇跡の薬」となったか

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favicons?domain=www.theguardian ガーディアン(The Guardian) 2020.04.10 UPDATE

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なぜ効果の検証されていないヒドロキシクロロキンがトランプの抗コロナウィルス「奇跡の薬」となったか (Hydroxychloroquine: how an unproven drug became Trump’s coronavirus 'miracle cure' )

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日吉 綾子

スウェーデン・オレブロ大学 医学部 准教授

ガーディアンで紹介されていたニュースです。アメリカでトランプ寄りとされているFoxニュースが、抗マラリア剤ヒドロキシクロロキンがCovid-19に効果があるとしたフランスの研究を紹介しました。瞬く間にトランプ大統領がCovid‐19に対する治療薬として強く勧めるに至ったが、感染症専門医らは根拠がないと必死に訴えている、との記事です。その元の臨床試験がどのようなものだったかとみてみました。

論文のタイトルに無作為化もしておらず二重盲検(Double-Blinded)でもないと表記してある点は正直な印象を受けました。これらの手続きは、試験結果が薬の効果以外の理由、例えば被検者の特性がグループ毎に偏っていたり、研究者がグループ毎に扱いを変えてしまったりすることで結果が無意味にならないようにするために必要な手続きです。

内容を見ると、ヒドロキシクロロキンを摂取したグループ9名、そうでないグループ(コントロール)6名とかなり小さく、グループ毎に病院も違い、平均年齢も51歳と37歳と大違いです。研究者は統計上有意差が無いということで良しとしたのかもしれませんが、統計検査はサンプルの数にも影響を受けますので、もう少し人数が多ければ有意であった可能性は高いと思います。
これら基本的な手法を取り入れていないことから、結果の信頼性はかなり低くなりますが、論文の結論はヒドロキシクロロキンによってCovid‐19のウィルス量が軽減・消失したと言い切っています。誤解の無いよう、信頼性の低さに言及するべきでした。

一刻も早く結果を、と願うのは研究者も研究の消費者も同じです。しかし、やはり信頼性を担保する最大限の努力と、結果だけでなくその結果の信頼性もきちんとわかりやすく伝える努力が必要なのだと、研究者の一員として感じました。

フランスの研究論文:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0924857920300996#bib0012 

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