アフリカ系イギリス人や少数民族のコロナ死亡率についてガーディアンの見解(The Guardian view on BAME death rates: inequality and injustice)
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ガーディアン(The Guardian) 2020.05.09 UPDATE
(イギリスの)コロナによる死亡は白人よりアフリカ系やアジア系イギリス人に高かった。社会経済的要因が重要な役割を果たしたか。(Coronavirus is much more likely to claim the lives of black people than white. Socio-economic factors are a significant contributor.)
こちらに統計局の発表した死亡率の格差の図が掲載されています:https://www.theguardian.com/world/2020/may/07/black-people-four-times-more-likely-to-die-from-covid-19-ons-finds
イギリスの統計局が自国のコロナによる死亡リスクをまとめたものに関する記事です。
白人に比べ、アフリカ系イギリス人のコロナによる死亡率は4倍、パキスタン・バングラディシュ系は3.5倍、インド系は2.5倍に上りました。65歳以上の人口はBAME*系では20人に一人で、白人系は5人に一人です。コロナのリスクが年齢に関連することを考えても、驚くような死亡率の高さです。統計局の計算では年齢、社会経済的要因、健康状態などの影響を統計的に除くと白人に比較したアフリカ系イギリス人のリスクは4倍から2倍程度に下がりましたが、それでも格差は残りました。(*BAMEというのはBlack and minority ethnic の頭文字をとった略称です。)
色々な理由が考えらえます。BAME系の人は社会経済的に恵まれていないことも多いです。糖尿病などの既往歴は社会経済的要因と関連します。また、BAME系の人の多く住む都会の密集地にコロナが発生したことも挙げられます。親世代と同居していることが多い、医療へのアクセスの良さの違いなども可能性としてあります。イギリスは医療は国で賄われており基本的にはみなアクセスできますが、例えば医療機関への距離、どの程度の症状で訪れるか、医師とのコミュニケーションが効率的に取れているかなどもBAME系の人の健康格差について語るときに挙げられてきました。
数日前にTwitterに端を発し話題となったBAME系の医療従事者の死亡率の高さにも触れられています。これまでに100人ほどのスタッフがコロナの犠牲になった中で、3分の2がBAME系でした。これはBAME系の医療従事者は全体の7分の1であることから見ると、非常に高いことになります。原因については、そもそもいじめやハラスメントを受けていると報告している率が白人より高ったことを鑑みれば、適切な装備などが満たされてなくても、要求するのをためらってしまったりすることがあるかもしれないと記事では推測されています。移民の一人として思うのは、何もなくても、言語の壁や人間関係の狭さ(古くからの友人が少なかったり、家族・親戚から離れていたり)で情報が遅れがちで、取り残されるまではいかなくても、不利になりがちというのもあります。医療機関への受診も、難しいと感じる人もいるのは分かります。スウェーデンの例で恐縮ですが、電話かコンピューターのシステムで予約しなければならないのですが、電話のアナウンスやシステムに英語の選択肢があってもどこかでスウェーデン語が必要で、わからないままボタンを押したりしているうちに切れたりし、具合が悪い時にはやってられないという気分になります。
これからこういったレポートが各国から出てくると思います。大事な視点ですので、注目していきたいところです。
統計局の計算手法のレポートはこちらです。3月2日から4月10日までの死亡で4月17日までに登録された死亡のデータを2011年の国勢調査につなげてエスニックグループを使ってロジスティックモデルという統計手法を用いてます。素早いですね。https://www.ons.gov.uk/peoplepopulationandcommunity/birthsdeathsandmarriages/deaths/methodologies/coronavirusrelateddeathsbyethnicgroupenglandandwalesmethodology
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