血液1滴でがん早期診断、「パンドラの箱」が開く
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日経デジタルヘルス 2015.07.22 UPDATE
(2015年5月28日 日経デジタルヘルスより) 1滴の血液や尿、唾液から、何種類ものがんを超早期の段階で診断する。そんな時代が意外にも早く訪れるかもしれない――。そう感じさせる開発プロジェクトが進行中だ。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が国立がん研究センターや東レ、東芝など9機関と共同で実施している「体液中マイクロRNA測定技術基盤開発」プロジェクト(関連記事1、同2)である。
もうあんな痛い苦しい検査を受けなくても血液一滴、尿や唾液でがん検診ができる!
本当に夢のような内容です。この記事の中の「可能性」と「期待」という単語が頻出していることからも、まだ夢が現実に一歩近づいた段階であることがよくわかります。ただ、この記事の読者層のターゲットとされている方はこの手の産業の方ですから、最先端の研究開発に関して敏感に察知したいことと思います。そういう方向けの記事だと思って読んで欲しいと思います。
検査の感度とは、検査により本当に病気にかかっている人を正しく診断する確率のことで、これが低い場合、病気の見落とし(偽陰性)が多くなります。
検査の特異度とは本当に病気でない人を正しく病気でないと判定する確率で、これが低いと検査により間違って病気とされてしまう(偽陽性)の人が多いのでよくない検査とされています。
対象とする集団において、どの程度その病気にかかっている人が多いかにも影響を受けますし、通常この2つの指標はいずれかが高いといずれかが低くなるというバランスの上に成り立つものなのですが、そのいずれもが99%とは一体どのような対象集団に行われたのか非常に気になります。
まだ開発段階の検査法を過信して、すでに確実な効果が明らかになっている検査法を受けないということは、自分の身体でギャンブルをするようなものということを常に心に留めておいてほしいと思います。
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伊藤ゆり
大阪医科大学 研究支援センター 医療統計室 室長・准教授 博士(保健学)
新しい検査技術の発展は喜ばしいことです。この検査も将来的には実用的に使われる可能性のある方法です。でも、今の段階で、一般の方にこれだけで安心、と思われるのは困るなぁと思いました。
報道では研究段階であるのか、実用段階であるのかが、一般の方にはわかりにくいのではないかな、と日頃から感じてます。このサイトをご覧になっている方には少しずつご理解いただけるよう、発信していきたいと思います。
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松尾恵太郎
愛知県がんセンター研究所 遺伝子医療研究部 部長 医師 博士(医学) 疫学修士 日本疫学会 理事
往々にして希望的な結果が先行し、報道には熱に浮かされた部分のみが出てきます。こういうバイオマーカー研究では、適切な研究デザインでの評価をなされていないことも往々にしてありますので、その辺りを割り引いて考える必要があるでしょう。
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