「良い肥満」と「悪い肥満」、太っていても運動量が多ければOK、ただし自己申告は当てにならない
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Medエッジ 2015.07.22 UPDATE
(2015年7月18日 Medエッジより) このたび加速度計を使って運動量を客観的に測定したところ、健康な肥満と判定される人は、不健康な肥満の人より運動量が多いと分かった。 英国ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンを含む研究グループが、米国栄養学会が発行する臨床栄養学分野の専門誌アメリカン・ジャーナル ・オブ・クリニカル・ニュートリションのオンライン版で2015年7月8日に報告した。
う~ん、ちょっと解釈に注意が必要な記事です。
まず、「良い肥満」と「悪い肥満」とありますが、「良い肥満」の定義は、この論文では「肥満でリスクが2つ未満」となっています。肥満自体がリスクで、さらに1つのリスクを併せ持つならば、リスクの集積状態になり、将来の罹患率や死亡率を高めることが予想されます。「良い肥満」だからOK、とは言い切れません。
次に、「太っていても運動量が多ければOK」とありますが、「良い肥満」の人のほうが「悪い肥満」の人よりも運動量が多かっただけで、将来の罹患率や死亡率を調べたわけではありません。原典の論文でも、「同じ肥満でも運動量が重要だ」と述べているのであって、「運動量が多ければOK」とは述べていません。
「自己申告は当てにならない」は、この論文で焦点を当てた「良い肥満」と「悪い肥満」の差について、加速度計を用いた客観的な身体活動量評価なら検出可能であったけれども、質問紙を用いた主観的な評価では検出できなかっただけで、「当てにならない」とは言い切れません。実際、他の多くの研究では、自己申告による身体活動量と健康指標との関連が示されています。
最後に、この研究は横断研究と言って、身体活動評価と健康指標の評価を同時におこなっています。このとき、「因果の逆転」と言って、「身体活動量が多いから健康」という流れとは逆の関係、「不健康だから身体活動量を増やす」という流れを含んでしまう可能性があります。そのため、横断研究ではなく時間経過を含む縦断研究によって、「身体活動⇒健康」を示す必要があります。
以上のことから、この記事は、「そういう研究もあるんだね」という程度に留めておくのがよいと思います。
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