貧困だと脳の発達が低水準に、MRI検査のデータから確認
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Medエッジ 2015.09.01 UPDATE
(2015年8月15日 Medエッジより) 貧困状態にあると、子どもの脳の構造にまで悪影響が及ぶと報告されている。 米国ミシガン大学公衆衛生大学院を含む研究グループが、小児科分野の国際誌ジャマ(JAMA)ペディアトリクス誌のオンライン版で2015年7月20日に報告した。 研究グループは、貧困状態にある家庭に生まれた子どもと成績の関連について注目している。 子どもは、学校の成績が伸びずに、教育レベルも伸びずに終わる場合が多い。子どもの貧困が長く続くほど、教育が不足していって、大人になっても影響は持き、職業にも影響を及ぼす。 ここに脳への影響も加わる可能性について想定した。
社会経済的状況による健康格差の問題について考える際に、例えば大人になってからの収入や習慣ははそれ以前の教育や生活環境に結びついていることから、生涯にわたる経過を踏まえることは大変重要です。今回の研究は幼少期の家庭環境と脳の発達について検証しており、とても興味深い研究です。
研究では、貧困家庭で育った子供たちの脳の成長は、そうでない家庭で育った子供たちに比べて低く、そのことが貧困家庭の子供たちの学業成績の到達度が低いことを媒介していることが示されています。脳の発達の遅れは貧困家庭の子供たちに見られましたが、貧困に近い層では、それ以外の家庭の子供たちと比べて違いは無かったとのことです。
これまでの研究でも、学業到達度については後の環境により変化することも報告されています。例えば1999年に発表されたDuymeらの論文では、知能検査で86以下の4歳から6歳の子供たちが裕福な家庭とそうでない家庭とに引き取られた場合、思春期の検査では前者の家庭の子供たちにおいて明らかな知的発達があったとされています。また、Feinsteinらの2003年の論文では、知的発達スコアの低い子供たちの中で、社会経済的に高い家庭の子供のスコアは成長と共に改善し、10歳までにもともと知的発達スコアの高かった子供たちにかなり近づくことが報告されています。
貧困そして健康格差の世代間連鎖を防ぐためにも、養育環境を整えることは大切なことであると改めて感じました。
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