砂糖に税金をかけると健康に?有力医学誌の誌上で賛否
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Medエッジ 2015.08.21 UPDATE
(2015年08月18日 Medエッジより)日本では6月に厚生労働省の有識者会議が提案した砂糖税。 海外では英国医師会が砂糖に「20%税」を求め、砂糖税が肥満対策に役立つかが注目されている。 有力医学誌BMJ誌で2015年7月29日に賛否の意見が紹介されている。 砂糖に税金をかけると良い?
” 日本では6月に厚生労働省の有識者会議が提案した砂糖税。
海外では英国医師会が砂糖に「20%税」を求め、砂糖税が肥満対策に役立つかが注目されている。
有力医学誌BMJ誌で2015年7月29日に賛否の意見が紹介されている。
砂糖に税金をかけると良い?”
このような特定の食べ物などに課税する取り組みは諸外国で行われ、その効果が公衆衛生の研究者により評価され議論されてきています。
さて、このように、海外での政策および政策についての研究結果を、日本にそのまま持ち込むことは果たして妥当でしょうか?
「妥当」とは、日本でも同じような効果が期待できるでしょうか?
私は、それは、否、と考えます。
健康政策に限らず、政策の効果は、その社会の在り方に大きく依存します。
人々の行動も社会により異なりますし、社会・国により、抱える課題が異なります。
さて、日本は、砂糖をコントロールすることが社会的にそれほど必要な課題でしょうか? 肥満は課題でしょうか?
肥満が課題ではないとは言いませんが、優先度は低いでしょう。
一応1つデータを示すと、日本社会の健康課題で優先度について計算した研究がありますと、それによれば、(様々解析はありますが1つ例を示すと)
喫煙>高血圧>運動不足>高血糖(糖尿病含む)>塩分とり過ぎ>アルコール摂取、
だそうです。肥満はもっと下です。
http://www.plosmedicine.org/corrections/pmed.1001160.s001.cn.pdf
元文献は以下です。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22291576
仮に日本で肥満をターゲットにするにしても、そもそも日本人は砂糖で特に太るわけではないでしょう。
アメリカで育っている人は、砂糖入りの飲み物(コーラ・ジュース)は、日本人には信じられないくらい飲みます。
一方、その食生活から、炭水化物のとり過ぎによる肥満は少ないと思います。
日本はどうでしょう?
砂糖入りの飲み物による負の効果は相対的にはかなり小さいのではないかと思います。
一方で、炭水化物の摂取過多による、肥満や糖尿病の増加は多いことでしょう。
(念のために付け加えると、私は新潟県生まれ育ちで白米が大好きで、白米を食べ過ぎる傾向にあります・・・ラーメンも好きです・・・ああおいしい白米とラーメンが食べたい・・・)
このように、おそらく同じようにはうまくいかないだろうなぁという気はします。
一方で、負の効果は出るでしょう。
例えば、課税とは、つまり値上げですので、物が売れなくなります。
日本経済という視点からみれば、今は、物を値上げするタイミングではないと思います。
アベノミクスの効果を、先の消費税増税で打ち消したばかりですので、ここでさらに(健康への効果がかなり怪しい増税政策で・・・)一般消費に冷や水を浴びせている場合ではないと思います(政府は、というか某省庁は、よほど増税したいのですしょうねぇ)。
仮にやるとしても、一部の地域でやってみればいいと思います。
最近、日本では各種特区が流行っていますが、このような課税政策も、特区で地域を限定してやってみればよいのではと思います。
ひょっとしたらうまくいくかもしれません。またやってみたら、日本特有のいいこと・困ったことが生じるかもしれません。
日本の政策は何でも、突然日本全国一律でやってしまうのが好きなようですが、それでは被害や混乱が大きすぎると思います。
またそもそもうまくいくかアヤシイことを全国でやるのはリスキー過ぎませんかね?
例えば、日本の中でも、肥満や心臓疾患が問題になっている沖縄で、この砂糖課税政策をやってみるのはどうでしょう?
その政策実施前後での、沖縄在住の人々の食生活行動の変化、及び集団レベルでの肥満の割合の変化、心臓の疾患の変化などをモニタリングするということです。
もちろん経済動向もチェックします。
そのような社会実験を日本はもっとどんどんやってみるべきだと思います。
いくら議論してもわからないことはたくさんあります。
やってみて、研究者に評価させて、政治がそれを継続・拡大するか判断する。ダメなら中止、それでいいと思います。
いくら議論してもうまくいくかどうかなんて結局わからんです。
いろいろやることで、日本社会にとって何がいいのか、ということがわかると思います。
このような保健政策における研究を日本はもっと推し進めていくべきだと思います。
理由は簡単、そのようなことは日本の役に立つと信じるからです。
日本の医療の研究は従来、基礎研究とよばれる研究(例:iPS細胞の仕組み)にかなり傾斜してきました(今もそうでしょう)。
このような研究が必要であることは否定はしませんが、全てを非本がやる必要は無いと思います。
なぜなら、この分野の知見は、日本で明らかになっても、米国で明らかになっても、インドで明らかになっても同じで、その後日本でも使うことができるからです。
一方で、日本社会の政策についての研究は、日本でやるしかありません。
前述のごとく、欧米でうまくいった政策あるから、そのまま日本で取り入れましょうかねーというのは、うまくいかないでしょう。
冒頭の「 砂糖に税金をかけると良い?」が日本社会で「良い」のかどうか明らかにするためにも、保健政策に限らず政策一般において、特区などでの積極的なトライアル、及び、その後の適切な厳密な評価(公衆衛生学的な研究)は、もっと推進されるべきだと思います。
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坪谷透
東北大学大学院歯学研究科 助教、博士(医学)、医師
余談ですが、文献情報は、以下のようです。
BMJ. 2012 Nov 21;345:e7889. doi: 10.1136/bmj.e7889.
Denmark cancels "fat tax" and shelves "sugar tax" because of threat of job losses.
Stafford N.
PMID: 23172946
http://www.bmj.com/content/345/bmj.e7889.long
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坪谷透
東北大学大学院歯学研究科 助教、博士(医学)、医師
正直デンマークの税金が廃止になった経緯については詳しくないですが、ググってみると、いろいろ負の側面があったようです。
まとめると
・逆進性:貧しい人により辛い
・経済および雇用の悪化
・デンマーク以外で買う人が増えた(健康の意味では意味なし)
などのようです。
http://www.narinari.com/Nd/20121119763.html
https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_000721.html
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%82%A5%E6%BA%80%E7%A8%8E#.E3.83.87.E3.83.B3.E3.83.9E.E3.83.BC.E3.82.AF
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HANA
健康のために税金をかける=消費量を減らしたい
ということではないのでしょうか?
デンマークの例では、消費量が減って文句が出たと書いてありますが、それは政策側には、効果があったということなのでしょうか?
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