国がん、がんの5年相対生存率を発表 - 全がん64.3%、肝臓35.9%
- 2,723
- 11
- 1
マイナビニュース 2015.09.16 UPDATE
(2015年9月15日 マイナビニュースより) 国立がん研究センター(国がん)は9月14日、全国のがん診療拠点病院の177施設約17万症例を対象とした、主要5部位のがんの5年相対生存率を公表した。 相対生存率とは、がんと診断された場合に、治療でどのくらい生命を救えるかを示す指標。5年相対生存率であれば、あるがんのうち5年後に生存している人の割合が、日本人全体で5年後に生存している人の割合に比べてどの程度低いかで表される。今回発表されたのは2007年にがん診療拠点病院で治療を開始した患者の5年相対生存率。
全国の都道府県に設置されているがん診療連携拠点病院で診療を受けた患者さんの5年生存率が発表されました。
http://www.ncc.go.jp/jp/information/press_release_20150914.html
国立がん研究センターが2007年から収集を開始し、初めて生存率の公表を行ったということで、話題を呼んでいます。
しかし、このデータを見る上で、二つポイントがあります。
1.がん診療連携拠点病院というがん治療の専門病院において治療を受けた患者さんの生存率であること
つまり、合併症があったり、がんがかなり進行していて積極的な治療ができなかったりする患者さんは、拠点病院ではない病院で治療を受けていることが多いため、この集計には含まれていない可能性が高いです。
先進的な専門病院で治療を受けることが出来た患者さんのデータであるため、地域全体のがん患者さんを把握する地域がん登録で把握されたがん患者さんの生存率よりも、少し高くなっています。
偏りの少ない平均的ながんの生存率は、住民すべてのがんの発症を登録し追跡する地域がん登録の生存率を参照して下さい。
http://ganjoho.jp/reg_stat/index.html
2.このデータ収集の本来の目的は都道府県間の比較ではない
そもそも院内がん登録は、各施設で診療したがん患者さんの情報を登録し、各施設での医療活動を評価するのが目的です。この拠点病院のデータ収集も、各拠点病院間できちんとがん診療が実施されているかを把握することが目的です。
最終的には施設別の生存率を把握し、がん医療が均てん化されているのか、拠点病院がきちんと機能しているのかを評価することになると思いますが、施設別に生存率を検討するには、がんの部位、年齢、進行度、合併症など、あまりにも影響する要因が多いため、1年単位のデータでは数が少な過ぎると思います。
今後、継続的にデータを集積し、また比較可能なレベルまでデータの質が上がることを期待したいと思います。
今回は、都道府県別に拠点病院で治療を受けた患者さんの生存率を提示されていますが、各都道府県における拠点病院でのカバー率や、患者さんの背景因子の影響を大きく受けているため、その補正をしていない値同士での比較は困難です。
ただ、このようなデータが集積され、悉皆性の高い地域がん登録のデータと一緒に分析することで、各都道府県のがん診療の実態が明らかになり、がん医療の均てん化の評価に役立つ資料を作成することが可能になってきます。
今回の公表は、限界がある中での第一歩。がん登録の資料が世の中に役に立つということを知っていただく良いきっかけになったと思いますが、限界をよく知った上で、ますます有意義なデータ活用をしていく努力が必要です。
送信完了
いいね!しているユーザー一覧
コメント編集
この著者による他の記事
アクセスランキング
近藤尚己
東京大学 大学院医学系研究科 健康教育・社会学分野 保健社会行動学分野 准教授 医師 社会疫学者
コメントとても勉強になります。ありがとうございます。
このコメントにいいね!する
0件