乳がん検診の利益と害
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Hearvard Health Publication 2015.12.01 UPDATE
(2015年10月20日 Harvard Health Publications 概要を日本語で要約) 米国がん協会は、乳がんマンモグラフィーによるスクリーニング検査(乳がん検診)を、45歳以降は毎年、55歳以降は1年おきの検査にするよう変更した(以前は40歳以降が毎年だった)。この変更は40歳以降とすると、利益より害が上回るという研究結果に基づいている。 利益:1万人の40代女性を毎年10年間マンモグラフィーでチェックすると、約190人の乳がんを発見できる。30人は検査をしても死亡し、5人が検査のおかげで助かる→確かに助かるが、少ない。 害:1万人マンモグラフィーでチェックすると6千人が再チェックに呼ばれる(乳がんの可能性がある陰影が写っているため)。そのうち、約700-1000人が生検を受けることになる(そのほとんどは癌ではない)。生検自体が不快な検査であるが、もっと大きな害は「過剰診断」である。乳がんのようにゆっくり進行する癌を、癌かそうじゃないか区別するのは非常に難しい。過剰診断率は19%で、先ほどの1万人の検査のうち190人が乳がんと診断されそのうち36人が過剰診断という計算になる。
これは米国のデータであって、日本とは異なる可能性があることを最初に申し上げておきます。
日本でも米国でも、がん検診の利益と害についての考え方は非常に難しいのが現状です。確かに確率は計算できますが、がんになってしまえばその人にとっては100%なので、一概に「こうすべき!」とは言えません。
司法の世界は、たとえ犯罪者を見逃したとしても、たった一人でも冤罪を作ってはいけない、とされますが、医療の世界ではどうでしょうか。癌を見逃すことと間違って癌と診断してしまうこと。どちらも患者さんにとってはありえないことだろうし、それを判断するのが医者の仕事だろう!と思っている方も多いでしょうが、早期であればあるほど難しいのが実情です。
費用対効果についても、かつては「効率を追求するなんてけしからん!少しでも命が助かることを優先すべきだろう!」と思っていましたが、冷静に考えると、どんなにお金をかけても完全に不安を取り除くことはできないし、このまま医療費が増え続けたら本当に医療費でつぶれる国が出てくるかもしれないとも思います。ほんと、難しいです。。。
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