「がん死は増加も、死亡率は減少」の不思議:病気にまつわる数字の話
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日経Gooday(グッデイ) 2015.12.22 UPDATE
(2015年12月21日 日経Gooday(グッデイ)より)「5年生存率」「検査陽性」「基準値」「平均余命」「リスク」…。皆さんは、ニュースで見かける健康・医療関連の数字の意味を、正しく理解していますか? 病気にまつわる「数字」について、誤解しがちなポイントを分かりやすく解説するとともに、数字の読み方、解釈の仕方についても、わかりやすく説明します。
がんで亡くなる方は増えている?減っている?の疑問に答えるとてもわかりやすい記事です。北澤京子さんのこの病気にまつわる数字シリーズは毎回ポイントをおさえた解説で楽しみにしています。
がんは高齢になるほどなりやすい、亡くなりやすい疾患なので、人口全体が高齢化しているため、がん死亡数は年々増加しています。ある時点、日本では1985年の年齢構成を基準として、それより前も後も同じ年齢構成だったらどうかという仮定で計算したのが年齢調整死亡率です。この調整で高齢化の影響を調整したら、がんの死亡率は減少傾向にあるというお話です。
年齢調整したがん死亡率が減少しているのは主にがんになる人自体が減っている胃がん、肝がんの減少の影響が大きいと言われています。もっとも死亡数の多い肺がんではまだあまり減少していないため、肺がんのリスクであるタバコ対策がまだまだ充分でないことがわかります。
全がんの死亡率をみるだけでは一面的で、がんの種類別に見ること、年齢調整だけでなく年齢階級ごとにみること、がんになった人(罹患率)や、がん医療の成果(生存率)を合わせて評価することが大切です。もちろんそれらの指標に影響を与える喫煙率や検診受診率、がん治療の内容についても観察し、どこが問題かを分析し対策に反映する必要があります。
がん死亡率は昔から人口動態統計で全国的に把握できていますが、がん罹患率や生存率はがん登録という仕組みがないと把握できません。長期間でこれらの指標の動向を評価出来るのはまだ一部の府県ですが、来年1月からスタートする全国がん登録は日本全国のがん罹患情報を登録する制度なので、大きな期待が寄せられています。
様々な視点でがん対策を評価し、具体的に政策に反映することでがん死亡減少を加速化できるのだと思います。次期計画には多面的な評価指標も盛り込んでいけるとよいなあと思っています。
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