初診時に転移していた乳がんは取り除く治療をしない方が良い?
- 1,630
- 5
- 0
Medエッジ 2015.12.23 UPDATE
(2015年12月22日 Medエッジより) 最初の診断時に既に転移していた乳がんの場合、腫瘍と近くのリンパ節転移を手術や放射線で取り除く治療に関して意見が分かれている。 既に転移している乳がんで初回の化学療法に反応した人の場合、最初の腫瘍を取り除いても全生存率に影響を及ぼさないという結果が出ている。
この記事は論文 Badwe R et al. Lancet Oncol 2015; 16:1380-8 を解説したものです。元の論文にも沢山のコメントがついていますので、話題になっているようです。記事中に元論文へのリンクもありますので、興味のある方は読んでみてください。
この研究はインドのムンバイで行われました。発見時に既に遠隔転移のある乳がんの患者さんに対して、まず全身治療としてホルモン療法や抗がん剤治療をして効果があった人を局所治療するグループとしないグループに振り分けました。この2つのグループで生存期間を比較しましたが、ほとんど差は見られませんでした。
この結果から、論文の著者らは転移のある乳がん患者さんにルーチン(決まった手順)として局所治療(乳房のがんに対する手術や放射線治療)をする必要はないと結論づけています。しかし、局所治療をしないグループでも、症状を抑えるために局所治療が必要だった患者さんが約10%いたと論文中にも記載されている通り、全ての局所治療を否定するものではありません。
もう一つ気をつけたいことがあります。論文へのコメントの多くでも触れられていますが、インドで行われた研究ということもあり、日本や欧米での一般的な乳がん治療に比べると不十分な治療しかされていません。また、一口に乳がんと言っても多くの種類に分けられ、その種類毎に進行の具合も違えば治療法も異なりますが、この研究ではその違いもあまり考慮されていません。こうしたことから、日本の乳がん患者さんに同様のことが言えるかどうかは慎重になる必要があります。
乳がんの経過は人によっても大きく異なりますので、進行の具合によっては局所治療をしたほうがいい場合もあれば、そうで無い場合もあります。この研究結果は参考の1つに過ぎませんので、もし乳がんの治療中に局所治療をすべきか悩む場合は、局所治療のメリット・デメリットを主治医と話し合って決めるに越したことはないでしょう。
送信完了
いいね!しているユーザー一覧
コメント編集
この著者による他の記事
アクセスランキング
この記事へのコメント