酒匂 赤人

国立国際医療研究センター国府台病院総合内科医師　公衆衛生学修士

この論文が載っているイギリスの医学雑誌は臨床医学の５大雑誌の一つともいわれており、掲載されている研究はかなりちゃんとしていると考えられます（もちろん権威のある雑誌にも内容が怪しかったり間違っている論文が載ることはありますが）。何の情報がもとになっているかわからない記事は医学研究に限らず、怪しげですが、この記事はちゃんと出典を示しているので、原文を確認することもでき、いいですね。

「片頭痛があった女性では、なかった女性に比べて心血管病にかかったり、それによって死亡するリスクが１．５倍に高まる」と記事では書いていますが、原文を読むと、心血管病にかかるリスクが1.5倍、それによって死亡するリスクが1.37倍と書いているようです。そんなに大した違いではないですけど。

片頭痛の人は脳梗塞になりやすいかどうかを調べた研究は過去にいくつもあり、日本神経学会と日本頭痛学会が出している慢性頭痛の診療ガイドライン2013ではそれらの研究をもとに「45歳未満の若年女性における前兆のある片頭痛では脳梗塞のリスクが若干増加する可能性があるが、この年齢層における虚血性脳卒中の年間発症率はきわめて低い。ただし、喫煙、経口避妊薬によりリスクが増加する。前兆のない片頭痛ではリスクは増加しない」と書かれています。今回の研究では心筋梗塞なども調べており、今後このような研究がいくつも行われることでもっと詳しくわかるようになると思いますが、片頭痛のある人はとりあえず喫煙とか肥満とか生活習慣病にはより注意する必要がありそうですね。

片頭痛は、片側がズキズキするような頭痛といわれますが、両側が痛くなることもよくあります。また肩こりがある人の頭痛は緊張型頭痛と診断されることが多いですが、片頭痛の人でも肩こりがでることはよくあります。片頭痛は痛みも結構強いことが多く、吐き気や嘔吐、光や音に敏感になるような症状も一緒に出ることもあり、日常生活に支障が出るくらいつらい頭痛になることもよくあります。

市販の頭痛薬で治療している人が多く、それで済む場合はもちろん構いませんが、トリプタン製剤などの片頭痛専用の薬もあるので（市販薬よりお金はかかりますが）、結構つらい人は受診したほうがいいかもしれません。受診するなら内科、神経内科、脳神経外科などがあり、また頭痛外来という専門外来を設けている病院もあります。