映画『こんな夜更けにバナナかよ』で、パラリンピックの本質を考える。

病気・医療

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favicons?domain=number.bunshun Number Web 2018.12.25 UPDATE

観終えた瞬間、スポーツの現場で漠然と抱いていた思いへの1つの答えが浮かんだような気がした。そんなことを感じさせる傑作だった――。映画『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』の試写会に参加する機会に恵まれた。同作は、ノンフィクションライター渡辺一史による書籍『こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち』(文春文庫)を実写化した作品だ。同書は、大宅壮一ノンフィクション賞と講談社ノンフィクション賞をダブル受賞している。幼少の頃、難病の筋ジストロフィーを患い、車椅子と介助がないと生きていけない身体となった鹿野靖明と、彼を支えるボランティアたちをはじめとする周囲の人たちの物語である。そこから連想されるであろう“よくある話”は、しかし、冒頭から裏切られることになる。

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酒匂 赤人

国立国際医療研究センター国府台病院総合内科医師 公衆衛生学修士

障がい者の自立生活を描いた映画についての記事を、スポーツ雑誌であるNumberが取り上げているのは面白いなと思ったのですが、パラリンピックという接点以外にも、原作の文庫版とノベライズ版がいずれも文春文庫から出ていて、Numberも文芸春秋発行という大人の事情もあるのかもしれません。

障がい者は努力や我慢のかたまりみたいないい人でなくてはならないというような、神聖視しているというか、要は普通の人間として見ないという偏見が以前よりはましになってきたかなと思います。Eテレのバリバラとかも最近話題になりますよね。映画も、もちろん全体としては感動したり笑ったりするようなエンタメ映画ではあるのですが、結構わがままなところも多く出てくるので共感できない部分もあるかもしれません。でも障がい者だってわがままでも構わないし、わがままにしないと生きていけないし、わがままにすることにも意義はあるのかな、とも思います。
「映画公式サイト」
http://bananakayo.jp/

実は僕は大学生の時に数年間鹿野さんのところで介助ボランティアをやっていました。貴重な経験でもあったし、バイタリティを尊敬することもあったし、でも「こんな夜更けにバナナかよ」みたいな頼まれごとでムッとしたこともよくありました。映画は「美しき実話」とありますが、試写会で見て懐かしいなと思うこともあれば、結構違うなという部分も多々ありました。ドキュメンタリー映画としてミニシアターで上映していくのではなく、エンタメ映画として有名俳優を起用して(特に北海道の大スターである大泉さんが主役なのがいいですね)多くの映画館でたくさんの人に観てもらう、というのも大きな意義があると思うので、脚色はやむを得ないのかなとも思いますが、できたら映画や映画のノベライズ文庫だけではなく、ちょっと厚めの本ですが原作を読んでほしいなと思います。何が正しくていいことなのかよくわからないなと考えさせるような本です。
『こんな夜更けにバナナかよ』文庫解説 by 山田 太一
https://honz.jp/articles/-/29784

ちなみに映画や本の宣伝をしているようですが、僕はコアメンバーではなかったので、原作にも登場はしていませんし、原作者の渡辺さんとも一回会ったことがある程度です。なので単に知ってほしい、読んでほしい、観てほしいなとは思っているだけです。利益相反と言って、製薬会社から陰でお金をもらって研究結果を捻じ曲げたり、怪しげな免疫療法や健康食品の宣伝のために本を書く、みたいなことはありません。

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