「幼児教育」が人生を変える、これだけの証拠
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東洋経済オンライン 2015.07.05 UPDATE
(2015年07月02日 東洋経済オンラインより) 親も国も、子供の教育が重要だということはわかっている。では、子供が何歳のときにどんな教育をすれば効果的なのか、そもそも人生の成功にはどんな力が必要なのかを聞かれて、答えられるだろうか。40年以上にわたる追跡調査から、5歳までの教育がやる気や忍耐力を伸ばし人生を変えることを、ノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・ヘックマン教授が、著書『幼児教育の経済学』の中から明らかにする。
この記事で紹介している調査は、海外の低所得など恵まれない家庭の子供を対象としたものです。政策的な視点で、学齢期前の恵まれない環境の子供に対する支援は、長期的に見て見返りの大きい公的投資である、というのがこの記事の示唆です。なので、日本国内の「幼児教育」でイメージされる早期能力開発やお受験の話ではありません。
では、幼児の早期能力開発やお受験は、どうなんでしょうか。このミスリーディングな記事タイトルの言うように、「人生を変える」ほど重要なんでしょうか。
お受験の目的(教育投資の効果)を、将来の所得や社会的地位だとしましょう。しかし、中流階級のすべての家庭が、上流をめざして子どもの教育をがんばった場合、みんなが上昇するわけですから、相対的地位は変わりません。
自分の学歴の価値は、競争相手となる周囲の学歴によって決まりますから、多くの人が同じ教育水準に達すれば、各自の教育の価値は下がってしまいます。
全員がつま先立ちをすれば、視野は変わらないのと同じです。
際限のない高学歴化が進むと、大学教育を必要としない仕事に就く大卒者の割合も増えるでしょう。
「こんな時代こそ教育投資が大事」という話は、供給側が儲けるためのしらじらしい空論かもしれません。
「人類の相対的なニーズは限度を知らない。絶対的なニーズが満たされた後は、賢明かつ快適かつ豊かに暮らす術を身に着けねばならない」とケインズは言ったそうです。
子供の教育でもケインズの言う視点が大事かもしれませんね。
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近藤尚己
東京大学 大学院医学系研究科 健康教育・社会学分野 保健社会行動学分野 准教授 医師 社会疫学者
重要な研究成果! 今少し話題になっている格差や貧困への対策に大きな示唆を与えてくれます。
所得の格差の解消、というと、社会保障や生活保護、最近では全国民に最低限の所得をすべての国民に提供するベーシックインカムの制度も現実味を持って議論されていますが、これはいずれも対症療法。今の子ども世代が大人になれば、一定の割合で貧困な大人世代が出てきますので、根本的な解決になりません。
そこで大切なのが(子どもへの)教育ですが、「忍耐力」など、いわば生きる力を最も少ない投資で身に着けてもらえる時期が、就学前の幼少期である可能性が高い、ということです。
この研究の成果に学ぶなら、大学や大学院など高等教育に大金を投資するより、もっと早い時期の教育の質を公平に上げたほうが、格差縮小、犯罪減少など、日本全体にとってもよさそうです。保育園・幼稚園など、今は待機児童を減らすことがまず目標ですが、早く保育園での教育の質の向上の段階に行けるといいかも、なんて思います。
ところでヘックマンさんがノーベル記念経済学賞をとったのはまったく別の、経済学的な分析技術に関するテーマに対してです。その後も研究を積み上げ、このように重要な成果を出しているのは素晴らしいですね。
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Satomi Ikoma
元記事の内容を読んだけど、読み解くのを断念。無駄に小難しく書いてる割に内容が抽象的で具体的じゃないから、結局どーすればいいのさ。と感じてしまってたら、その後、奥原先生のコメントを見て、なるほどな…と。
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