コストを語らずにきた代償

健康・予防

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favicons?domain=www.igaku-shoin.co 医学書院 2016.03.07 UPDATE

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(2016年3月7日 医学書院より) 今,がん領域では,抗PD-1抗体,抗PD-L1抗体,抗CTLA-4抗体などの免疫チェックポイント阻害薬が注目されている。日本ではその中の1つ,抗PD-1抗体の「ニボルマブ」(オプジーボ®,MEMO)が2014年に「根治切除不能な悪性黒色腫」に対して承認され,2015年12月には「切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」へ適応拡大された。従来の抗がん薬と異なる新しい作用機序を持つ同薬は,今後他のがん種にも適応が広がると予想され,大きな期待が寄せられている。しかし,國頭氏は,この免疫チェックポイント阻害薬の登場によって医療,それどころか国そのものの存続が脅かされると指摘する。一体,どこにその危険性があるというのだろうか。氏は,「すでに手遅れ」と語るが――。

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坪谷透

東北大学大学院歯学研究科 助教、博士(医学)、医師

"國頭 ニボルマブを1年間使用すると約3500万円という額に達します。これは,今まで「高額」と言われてきた分子標的薬よりもずっと高い。分子標的薬の中でも高額なALK阻害薬アレクチニブ(アレセンサ®)ですら1年間で950万円超なわけですから,ニボルマブがいかに高価な薬剤であるかがわかります。

 では,そのお金はどこから出ることになるのか。国民皆保険制度に加え,高額療養費制度がある日本では,医療費の自己負担額は最高でも年間200万円程度です。だからニボルマブを使うと,実際に患者が負担するのは総額の5%以下で,残りは全て公的負担です。したがって,ほとんどを国全体で賄うことになるわけです。今後続くであろう同種薬剤も同程度に値付けされると思うと,これらによって国の財政は逼迫すると容易に想像がつきます。 "


ここ数年、急激に高額な薬剤や医療機器を使った治療が増えてきています。

医学の進歩は、その恩恵を受けることができれば素晴らしいことだと思います。

より多くの人が、恩恵を受けるには、日本では、保険制度に含まれることが必要といってもいいでしょう。

自費診療では、自己負担が大きく、また、国からの「お墨付き」がないので、信頼がないこともあるのでしょう、新しい技術はなかなか普及しません(例外が歯科の矯正やインプラントでしょうか)。

一方、いったん保険に入ると、多くの人が、小さな自己負担で、その医療を享受することができるようになり、日本中で普及することが多いです。

保険に含まれている医療行為では、自己負担が、一定の金額を超えた場合は、「高額療養費制度」という制度があり、自己負担は天井に達します。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/juuyou/kougakuiryou/index.html?utm_source=echofon

病気で困っている人が、大きな自己負担を強いられないことは、それだけを見ればよいことに思えますが、集団でそれを見ると、結局その費用を、「誰か」が支払う必要があるわけです。

「誰か」とは?

気前のよいお金持ちの「誰か」がいればよいのですが、残念ながらそういう人はおらず、それは結局みんなで負担しているのです(=保険料・税金)。

巡り巡って、保険料の上昇・税金の上昇・国債残高の上昇につながっていくのでしょう。

そんなことになってきているので、新しい治療を何でもかんでも保険に入れることはできません。

そこで議論・決断が必要です。

例えば、仮に、

「年間1万円で胃がんの人の寿命が1年延びる治療」

があったとします(薬でも手術でも何でもいいです)。

これはあまり議論するまでもなく、保険に入れてよい気がします(もちろん安全なら)。

さて

「年間100万円で胃がんの人の寿命が1年延びる治療」

はどうでしょう?

金額が100倍になりましたが、まだ多くの人が「保険に入れてOK」というのではないでしょうか。

では、

「年間1億円で胃がんの人の寿命が1年延びる治療」

だとどうでしょう?

「いや保険に入れるべきでしょ」という人もいるでしょうし、「うーん若い人限定ならいいんじゃない」とか考える人が出てきそうな気がします。

では、

「年間1億円で胃がんの人の寿命が1か月だけ延びる治療」

は?

入れる?入れない?

こういう議論って重要ではないでしょうか。少なくとも私は重要だと思います。

もちろん誰かが決めてきているわけです。

誰がどうやって決めているかみなさんご存知でしょうか?


そういうことを議論しているのは、

中央社会保険医療協議会 (中央社会保険医療協議会総会)、通称、中医協(ちゅういきょう)

です。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-chuo.html?tid=128154


さて、誰がメンバーなんでしょう?

wikiにわかりやすく書いてあります。

”中央社会保険医療協議会は、次に掲げる委員20人をもって組織される。

健康保険、船員保険及び国民健康保険の保険者並びに被保険者、事業主及び船舶所有者を代表する委員 - 7人
医師、歯科医師及び薬剤師を代表する委員 - 7人
公益を代表する委員 -6 人”

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E5%A4%AE%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E4%BF%9D%E9%99%BA%E5%8C%BB%E7%99%82%E5%8D%94%E8%AD%B0%E4%BC%9A#.E5.A7.94.E5.93.A1

まず、保険者(国民から保険料を集めているところ)と専門家(医者など)、ですね。

加えて「 公益を代表する委員 -6 人」となっています。

wikiを見る限りでは、後者はほぼ大学教員(教授)のようです。
おひとり例外がいて、財団法人日本対がん協会常務理事が入っておられますが、この人が入るって、どうやって決まったんでしょう?(私は知りません。ご存知の方いたら教えてください)

こういうのに、専門家ではない「普通の人」(庶民の代表的な人)は入っていなくていいんでしょうか?

話が難しすぎるからしょうがない?

また、どの「普通の人」を選ぶの?という問題もありそうです(裁判員制度と同じ)。

それなら「普通の人」の代表者の政治家が入ってもよさそうでは?と思います。

効果抜群で手ごろな価格のものばかりのころは、あまり難しく考えずに、新しい治療法は保険に入れてもよかったのかもしれません。

しかし、効果がうーん微妙・・・・&値段がとてつもなく高いとなってくると、はいどうぞとはなかなか言えません。

また「普通の人」が入ったところで、どうやって決めていいかさっぱりわからん、となりそうです。

欧米では、ここら辺の議論を、数字で行ってきています。

例:医薬品政策に経済評価の視点を(PDF:1040KB)
https://www.jri.co.jp/file/report/jrireview/pdf/6699.pdf

考え方としては、例えば、

「健康な寿命を1年延ばす治療なら500万円未満なら保険に入れよう」

的な感じです。

いわゆるコスパ重視ですね。

こういう考え方、日本もどんどん取り入れるべきでしょうか?(実は中医協も取り入れだしているようですが)


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