貧乏な人が豚肉と麺をたくさん食べるワケ

食事

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favicons?domain=www.msn msn 2019.07.16 UPDATE

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現代人は日頃どんなものを食べているのか。厚生労働省の「国民健康・栄養調査」を調べた統計データ分析家の本川裕氏は、「とりわけ『食料に困っている者』は全体平均に比べ、米や小麦などの穀物や豚肉を多く食べていることがわかった」という――。

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児林聡美

HERS M&S 代表、保健学博士、公衆衛生学修士(MPH)、農学修士

厚生労働省の行った
国民健康・栄養調査で行った、食事記録の結果を解釈した記事のようです。

けれども、この調査で行った、
食べたものを自分で記録するような自己申告による食事調査では、
必ず誤差が生じます。
多くの場合は、食べたことを忘れたり、
記録漏れを起こしたりして、
少なめに申告されることが多いです(文献1)。
過小申告といいます。

その過小申告の度合いは、
・やせている人より太っている人のほうが大きい(文献1)
・男性より女性のほうが大きい(文献2)
など、その集団の特性によって違いがみられます。

この記事では
「経済的な理由で食物の購入を控えた又は購入できなかった経験」が
「よくあった」または「ときどきあった」人たちと
そうでない人たちの2つの群の
食事摂取量の結果を分析しています。

けれども、この2つの群の間に、
・肥満度の差がなかったのか
・男女の構成に違いはなかったのか
・ほかに申告誤差に影響を与える要因の影響はないのか
といったことを統計的に処理していなければ、
2つの群に本当に差があるのか、言うことはできません。

そして、国民健康・栄養調査では、そのような統計解析は行っていません。

それに、穀物や豚肉の摂取量が100に比べて101だったから「多かった」と言えません。
この差は誤差の範囲かもしれません。

「多かった」というためには、検定という統計の手法を用いて調べるか、
信頼区間という統計の値を計算して、誤差があったとしても
100よりは多くなる可能性が高いことを示さなくてはなりません。
国民健康・栄養調査では、そのような統計処理も行っていません。

食事のデータを分析するときには、
栄養疫学特有の現象をよく理解したうえで、
疫学の分析に必要な統計手法を用いる必要があります。

摂取量が「多い」「少ない」というのは、
実はすごく難しくて、
単純にはいかないのです。

[参考文献]
1. 厚生労働省. 日本人の食事摂取基準2015年版. 2014.
2. Okubo et al. Public Health Nutr 2006; 9: 651-7.

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