医療保険は安心料? 消費者が惑う「不幸の物語」
- 2,893
- 3
- 0
日本経済新聞 2015.07.28 UPDATE
(2015年7月27日 日本経済新聞より) 「後田さんが『医療保険』への加入を費用対効果の面から疑問視なさっていることは承知しています。とはいえ、いくら貯金があっても、病気の時に貯金が減っていく不安というのは大きいと思うんです。やはり医療保険の保険料は、“安心料”と考えていいのではないでしょうか」 最近、複数の媒体の人たちから、取材の際に言われたことです。 私は「たしかに貯蓄を取り崩す不安はもっともなものだと思います。だからこそ『別の見方』も伝えたい。受けとめ方はもちろん人それぞれで良いはずです」と前置きして持論を語ることにしました。 保険加入の必要性に関する判断が、病気になった時という「状況設定」に影響されているように思えるからです。我が身に起こる「不幸の物語」といってもいいでしょう。テーマは損失で、そこに絡む切実な願望に訴え、動揺を誘う物語ともいえるかもしれません。
この記事は、保険コンサルタントが、医療保険について、「貯蓄で対応できる人は入らなくてよいと思うが、現実には多くの人が入っている。それは“病気になって貯金を崩す”という“不幸の物語”の説得力が絶大だから。つくづく人を動揺させる物語の力はすごい」と述べています。
本日はスタジオに、元プロ野球選手の長嶋茂雄さんにお越しいただいています。長嶋さん、いかがでしょうか。
長嶋「ンー、物語、つまりドラマが、シュッ、パッとヒットするんでしょうね。ロマンス小説を頻繁に読む女性は、そうでない女性より、コンドームを使わない傾向があるそうですしね。ンー、それもドラマの力でしょうね」(Psychology of Women Quarterly, 24(2), 179-188.)
なぜ物語は人を動かすのでしょうか。
長嶋「もちろんそれは感情に訴えるからですね。ハートにね、シュッ、パッとね。記録を書き残す習慣がなかった中世の時代は、土地の譲渡や結婚など重要な出来事は、7歳くらいの子供に出来事を見させてから、川に投げ込む。そうすると記憶は一生保たれると考えられていたそうですね。ハートにグッと来た事は忘れないのね。ドラマもそうね」
つまり、物語は感情に訴えて、記憶に残るから、行動を促す、と。
長嶋「リスクが1.3倍とか数字で言われても、忘れちゃいますよー、ウフフ。抽象的な内容より、物語の方が記憶に残るのね。仁志君が打って、川相君がつないで、松井君、落合君が打って、メイク・ドラマ。忘れませんねー。
それともうひとつね。112358132134という数字、5秒で覚えられます? ミッションインポッシブルでしょう?
しかしね、これはフィボナッチ数列と言いましてね、1+1=2, 1+2=3, 2+3=5, 3+5=8….と式の後ろの2つの数字を足していくという構造なんですね。構造がわかると覚えられるでしょう。構造化された情報は人の記憶に残りやすいんですね」(Memory & Cognition, 3(2), 216-220.)
つまり、物語は、誰が、どこで、何をしたという構造があるから、記憶に残り、行動を促す、ということなんですね。
長嶋「木目調の壁を見ていると、人の顔に見えたりするでしょう? 人間は、無秩序の中に、パターンや構造を見出したいのね。私は、木目の壁に、ミット、バット、巨人軍のマークが見えますよ」
長嶋さん、ありがとうございました。
人を動かしたいときは、メイク・ドラマ。物語の力を使うといいんですね。
送信完了
いいね!しているユーザー一覧
コメント編集
この著者による他の記事
アクセスランキング
この記事へのコメント