笹井浩行

東京都健康長寿医療センター研究所・主任研究員　博士（スポーツ医学）

妊娠中の運動について，日本全国のクリニックに記載されている情報を引用しながら解説した記事です．

妊娠中に勧められる運動種目や強度，妊娠中のどの時期に運動すべきか，すべきでないかなど，たくさんの情報が載せられています．しかし，科学的な根拠によりサポートされている情報は多くありません．

日本産科婦人科学会による「産婦人科診療ガイドライン―産科編2014」にも妊娠中の運動に関する記述があります（p.103-104）．
http://www.jsog.or.jp/activity/pdf/gl_sanka_2014.pdf

ここでは「妊娠中の運動による妊娠高血圧症候群，妊娠糖尿病，ならびに遷延分娩などの予防効果については根拠が乏しい」ことが明記されています．

科学的根拠が少ないのは，大事な命を身ごもった妊婦さんに，研究参加者としてご協力を得るのが，他の対象集団に比べて難しいことが影響しているのかもしれません．

とはいえ，運動に関わる研究者の立場から，妊娠中および産後の運動による予防医学・健康増進効果については，今後取り組むべき重要な研究課題になると考えています．