近代医学の歴史はせいぜい100年程度…診断、治療にも限界が
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読売新聞 2016.11.05 UPDATE
多くの人は、病院に行けば正しく診断され、適切に治療が行われるはずと考えているでしょう。 「正しく診断され、適切に治療」されるためには、当然、その症状や、病気について十分解明されている必要があります。
この記事にも書かれているように、普段診察をしていても、医者としてよくわからないことは結構あります。病院にいけば、そしていろいろと検査をすれば、必ず自分の症状の原因が判明し、治療ができると思っている方も時々いますが、残念ながらそこまで医学は進んでいません。
発熱と咳の症状で受診したとして、問診や診察をすることで風邪らしいか、肺炎らしいか、ある程度はわかりますが、断定はできません。さらに血液検査やレントゲンを撮っても区別できないこともよくあります。だからといって全員にCT検査をしたり、抗生剤を処方すれば、肺炎が見逃されて治療が遅れる人は減るでしょうが、CTの費用や被ばくが不必要に増え、抗生剤による副作用や耐性菌が増えることになります。
また初診の時点では風邪だろうなと思っても、数日後に肺炎だとわかることはあります。見逃しをゼロにしようとすれば必要のない過剰な検査や治療をする人が増えることになります。初診の時点でいろいろ検査をして急いで診断・治療が必要なひともいますが、最初の時点では問診と診察で十分で、あとはその後の経過次第で必要なら検査や抗生剤を出せばよいと判断することもよくあります。これはあくまでも医師の論理であり、患者さんの期待とギャップが生じることもあるので、コミュニケーションが大事だとは思います。医師にとっては風邪だと思った人のうち1%が肺炎だったとしても、その患者さんから見れば100%ということになりますし。
手塚治虫の漫画ブラックジャックで、恩師の本間丈太郎が「人間が生きものの生き死にを自由にしようなんておこがましいとは思わんかね………」と言ったのを時々思い出します。あくまでも医師として謙虚に仕事をしなくてはという意味であって別にあきらめているわけでは決してなく、できるだけ期待に応えたいとは思って日々勉強や研究をしていますし、医学もどんどん進歩していってはいるのですが。
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