不健康な食事スタイルが20年で増加
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糖尿病ネットワーク 2016.09.05 UPDATE
世界の多くの地域で、この20年で野菜や果物などの健康的な食品の消費が増えたが、加工肉や高カロリー飲料などの不健康な食品の消費はそれを上回る勢いで増えていることが、世界187ヵ国の45億人を対象とした調査研究で明らかになった。 研究は、英国のケンブリッジ大学などの研究チームによるもので、英国の国立医療研究機関であるMRCやビル&メリンダ・ゲイツ財団などから資金提供を受けて行われた。研究チームは世界中で実施されている300件以上の栄養調査の解析を行った。
2015年に発表された世界187カ国の食事の質の研究です。報道の在り方を考える機会としてピックアップしました。
この研究の筆頭著者は私です。
食事の質が非感染性の慢性疾患(Non-communicable diseases, NCD)に関係する食事の因子の摂取量で評価されているためか、糖尿病関係のウェブサイトで紹介されています。その記事に次の一文があります。
“「NCDと関わりが深いのが食生活です。NCDを減らすために、健康的な食事を増やす必要があります。各国の政府や保健機関はこのことをしっかり受けと めて、食事が健康的な生活スタイルを決定するという認知を社会に拡げるべきです」と、ケンブリッジ大学の今村文昭氏は言う。 ”
この文章ですと、あたかも私自身がこう述べたような印象を与えます。しかし、私はこのようなことは論文にも書いておりませんし、インタビューでも答えていません。(日本語でのインタビューはありませんでした。)というわけで、実際にはこの記事を書いた方が作った文章です。(「食事が健康的な生活スタイルを決定する」ということは、論文で言えることを逸脱しており、論文に関する文言としてはNGです。)
通常、ウェブ上の記事では、記事を書いている人が、文章に説得力を持たせようと、あれこれ工夫します。この記事では、専門家が実際に述べているかのようにする工夫があります。しかし、本人が言ってもないことを、あたかも言っているかのように書く事はあってはなりません。というわけで、この記事は報道の倫理に反していると言ってよいでしょう。
ちなみに、同じようにモラルに反する記事がベルギーでも紹介されました。あるベルギーの新聞記者がオランダ語で、私がベルギーのワッフルなどの食文化を批判する発言をしたかのように記事にし、私はベルギーの医師からお叱りのメールを頂きました。その後、身に覚えの無いこと、研究で行ったことなど正確にメールで説明し、その医師には十分に納得して頂けましたが・・
近年、ウェブ上であたかもインタビューしたかのような文章がありますが、本当にインタビューされたかどうか不明なものが多いです。そのインタビュー時の写真が載っていたり、明確に許可を得たという一文があれば信頼できますが、そうでない限りは捏造の可能性を疑ってよいでしょう。
最近のメディアにおいて、論文になった医学研究をピックアップしようという傾向があるのはよいことと思います。しかし、この記事にも誤解があるように、まだまだメディア側と研究者側とのコミュニケーションが足りないように思います。(私が仲間はずれなだけかもしれませんが。)
また、記事の内容には誤りがあります。この研究では、1990年と2010年との食事の質をざっくりと評価したのですが、北米と西欧の先進国は食事の質は 上がっていると評価できました。実際に別の研究でも同様の傾向が支持されています。逆のことだけを書いているこの記事を書いた方は、そもそも正確に論文を解釈 できていないように思います。そして論文中の図にも著作権があるので、このように翻訳して正確に図の出所を記載せずに掲載するのもNGです。論文を取りあげて頂くのは嬉しいですが・・。
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