健康ポイント制度で医療費抑制効果 初の実証

健康・予防

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favicons?domain=www3.nhk.or NHKニュース 2016.12.09 UPDATE

東京オリンピックをきっかけにスポーツによる健康増進に取り組む自治体が増える中、健康づくりに取り組んだ人にポイントを与える「健康ポイント制度」に、医療費を抑制する効果があることが初めて実証されました。

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坪谷透

東北大学大学院歯学研究科 助教、博士(医学)、医師

この内容、かなりミスリーディングになりうる懸念があると感じたため、記載させていただきます。


以下まず記事の引用。

”医療費を抑制する効果があることが初めて実証されました。
健康ポイント制度は、運動や検診などを行った人がポイントを受け取って商品券などに交換する制度で、スポーツで住民の健康を増進し、医療費も削減しようと導入する自治体が増えています。

この健康ポイントの効果を探ろうと、国はおととしから6つの自治体を対象に調査を行っていて、これまでに運動への無関心層を掘り起こす一定の効果が確認されています。

さらに、参加した40代以上のおよそ1700人の昨年度1年間の医療費について、参加しなかった人と比べた結果、1人当たりおよそ4万3000円を抑えたことが新たにわかり、医療費抑制の効果が初めて実証されました。

調査には1万2000人余りが参加していることから、今回の結果を基にシミュレーションすると、全体で5億円ほどの医療費の抑制効果があり、健康ポイント制度の事業費を3億円余り上回るということです。

国の委託を受けて調査した筑波大学の久野譜也教授は、「健康ポイントによる医療費の抑制効果を裏付けた調査はこれまでに例がなく、自治体が導入する動きが加速するだろう」と話しています。”


ようするに、健康ポイント制度を導入すれば、医療費が下がることが証明されました、ということかと思います。


上記の情報は、おそらく以下ではないかと思います。
http://www.swc.jp/about/about1/
(多少数字が異なりますが、それは計算に用いている自治体が異なるのでは無いかと推察します。基本的には同じスキームであると推察します)


ここには、大きな偏りが存在している可能性があります。

「選択バイアス」と呼ばれるものです。
説明の例:http://www.healthliteracy.jp/shinrai/post_3.html


” 研究対象者の選び方で生じるバイアスのことです。研究対象にしたい人たちのなかから、選ぶ前や選んだ後に研究対象から落ちてしまったり、ある特徴を持った偏った対象が選ばれてしまったことによって生じます。

 例えば、重度のがんに効くとされる抗がん剤の効果を実験するために、がんの患者さんの中から参加者を募り、実験を行った結果、効果が上がったとします。しかし、その実験は長期間かかる実験で、最後まで参加したという人は体力がある方ばかりであったとします。このようなときに、選択バイアスが生じているといいます。がんをはねのけるくらい体力があった人だけの結果であるかもしれないからです。

 また、職場で働く人を対象に健康調査をする場合、その時に健康を害して退職したり休職していて選ばれないことで、結果は健康な労働者だけになってしまって、本当に知りたい人が選ばれないことになります。これを「健康労働者(ヘルシーワーカー)効果」といいます。高齢者でも、老人クラブに集まっている人を調査をすれば、元気な人ばかりが対象になる可能性があります。

 これらの対処法として、研究者は、対象者の選び方によって選ばれやすい人や選ばれにくい人が出ないようにします。そのため事前には対象者が偏らないような環境や条件を整えることや、研究が始まった後は研究そのものが負担にならないように考慮することが必要です。”


今回の事例では、3年も健康プログラムに残った人は、相当に健康状態が良好な「エリート」集団であると感じます。

一方その比較群とされている人は、そうではない人でしょう。

プログラム開始時点の2群の性別と年齢は同じになるようにされているようですが、肝心な要因はもっと他にもたくさんあります。

これまでの病気の有無、元々の運動習慣、喫煙・飲酒状況、家族構成、医療機関への近さ、などなど、その後の医療費に影響しそうなものはたくさんあります。

これらの要因が、「調査には1万2000人余りが参加している」2群の中で、プログラム開始時点で本当に同じなのか? そこが非常に重要と思います。

そもそも、当初「健康づくり教室」に割り付けられた人で途中で参加しなくなった人(たくさんいると思います)の、扱いはどうなっているのでしょうか。

そもそも、「健康づくり教室」に割り付けられた人は、どのように選ばれたのでしょうか?研究者側から選んだのか?自発的に来た人なのか。後者であれば、かなり意欲的な集団ですので、何もしなくてもそのような人たちは、将来的には医療費が下がることでしょう。

通常、研究では、そのような、「どのようにリクルートして、何人で開始して、いつ何人がいなくなって・・・」ということを示します。

それは、上述の「2群の偏り」がないかどうかを考えるためです。

2郡で偏りがあれば、偏りに基づいた差なのか、プログラムの効果なのか、判別できないからです。

これらは、この研究内容が、適切な学会で発表されたり、論文で投稿されれば、議論される内容でしょう。

そのような学術的に必要な適切な議論が行われることなく、不適切な解釈により、世論・マスメディアが動き、政策に取り込まれてしまうことを懸念します。




それと、上記とは論点がずれますが、アウトカムの設定にも疑問があります。

医療費のみ? こういうのはむしろ介護費用ではないでしょうか?

もしくは、医療費+介護費、でもいいでしょう。

場合によっては、さらに障害福祉に関わる費用(生活保護含む)などもあわせて検討されるべきかなと思います。

ここらへんの議論も、学会などで発表があれば、通常議論がなされるのではないかと思います。



この健康ポイントの行方、とても不安です。

引き続き、注意してみて行きたいと思います。

関連する続報があればぜひ教えてください。

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