世界一の長寿国「日本人の体質」驚きの秘密~欧米人とはこんなに違う 遺伝子はあなたの健康を覚えている (現代ビジネス)

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favicons?domain=zasshi.news.yahoo.co Yahoo!ニュース 2017.01.24 UPDATE

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レストランで知人が言いました。  「ステーキとかすき焼きって、霜降りより赤身肉のほうが食べやすくないですか? モモ肉とか」  「そうですよね」と同意すると、知人は嬉しそうに、でも少し声をひそめて、「マグロのトロとかも言うほどおいしいと思えなくて。変わってるって思われちゃうかもしれないけど」。

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今村文昭

ケンブリッジ大学医学部 MRC疫学ユニット

原文はこちらです。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50680

これは『欧米人とはこんなに違った日本人の「体質」』という書籍に関する記事です。上記ウェブサイトによると、本の著者ご本人が書いた記事のようです。

健康に関する一般向け書籍の内容というものは往々にして“良いとこどりの科学情報の寄せ集め”であることが多く、健康に関して有益な情報を得たいと手に取る人々に嘘の知識や誤解を与えかねないものと言っても過言ではありません。この書籍もまさしくそう言った類のものです。

更に厄介な事として、正しいと思われる情報もそこここに記され、それが誤った情報と混在して完全な否定や批判はし難いものになっています。とはいえ大筋では誤りです。この本で強調されている事の1つは“日本の食環境が日本人の体質を作った”という持論です。私もそう信じたい者の一人ですが、それを示す事実は非常に限られており一般的な疾患の予防に応用できる様なエビデンスは確立されていません。

近年「科学的根拠=エビデンス」が重要視されてきているのは好ましい事と思います。しかし一般向けにできるだけ正確な情報を提供するには科学者の良心が必要です。持論を支える論拠だけ選択せず、包括的に伝えることが大前提。そういった観点からこの書籍は残念なものといえるでしょう。理論的におかしい、あるいは事実に基づいていない情報が連続してしまっています。

数ヵ所抜粋して、その内容について少し具体的にコメントしたいと思います。

1.【日本人の胃腸はご飯を消化するようにできていますし、ちょっと余分に脂肪を取ると危険な内臓脂肪がついてしまいます。】

これは明白な誤りであり、生理学的には炭水化物を摂取した方が内臓脂肪が付きやすくなる事が判っています。また「余分に」摂取すれば脂質でも炭水化物でもNGです。

2.【欧米人に比べ日本人はインスリンの分泌量が少ない。】

この表記に意味はありません。アジア人は小柄ですし、血糖値をコントロールする能力が優れインスリン分泌も少量で済んでいるということが認められています。インスリンの分泌量が少ない事は問題にはできません。

3.【日本人は魚から大きな恩恵を受けてきました。日本人の血液はEPAとDHAの濃度が高いためコレステロール値が上がっても動脈硬化がなかなか進みません。】、【日本人は豆腐、みそ、納豆などの大豆製品を米国人の700倍食べており心筋梗塞や乳がんの発症をおさえます。】、【日本人のカルシウム摂取量は米国人の半分で、不足しがちと言われています。ところが、牛乳をしっかり飲んでいるはずの米国人は骨粗鬆症の発症率が日本人の二倍高いのです。・・・】

日本の食環境が良いから日本人の体質も良い、とあたかも関係性が証明されているかの様に論じています。食環境が良い事と体質が食環境に合っている事とは別の問題で後者については述べられていません。大豆に関しても言い過ぎで大豆製品が疾患の発症を抑えられるかどうかのエビデンスはありません。

4.【米国に移住した日系人は心臓の血管の動脈硬化が米国白人よりはやく進み、糖尿病や大腸がんの発症率も欧米人を上回ります。】

喫煙率や血中の脂質といった他の動脈硬化に関連する因子を考慮すると動脈硬化の進行度に関する違いはないとされています。また研究の数も質も限られています。糖尿病や大腸がんの発症率が米国白人のそれを上回る報告はありますが、あくまでも日系人と白人と同じ生活を営み、食事、ストレスなど全ての条件が一緒だと仮定した上での話ですのでまだ科学的に判子が押せるものではありません。

また、日本人の大腸がんを患う率は日本にいてもアメリカにいても日本人の方が米国にいる白人よりも高いことが認められています。がん検診や予防的な手術の実施といった行動の違いからかもしれません。がんを患ってしまうほど日本人が長生きだからかもしれません。現時点では日本人の生まれ持った体質が原因とは言えません。

そして日本と欧米の生活環境について語る時は糖尿病やある種の癌にとどまらず異なる疾患も考慮しなくてはなりません。米国に移住した日本人は脳卒中や胃がんを患う率が平均の日本人よりも低いことが認められています。そのように発症率の低くなった疾患にも目を向けなくてはなりません。そして運動しなくなったり食の溢れる環境にいる事も同時に考慮せねばなりません。以上の様に様々な理由から欧米の食生活が良くないかのように言うのは誤りです。そして日本の体質について云々と述べることにも無理があります。

コメントすればきりがありませんが、ともかく「売れている本」だからといって信頼してはいけないという事例です。日本人の気質、長寿、日本食、日本の文化、風土など、魅力的な文言が多く、その気持は理解できますが、一般向けといえども医学を謳っている以上はやはり気をつけなくてはいけません・・・。

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