健康をモラル化する社会『不健康は悪なのか』
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BLOGOS 2015.07.22 UPDATE
(2015年07月20日 BLOGOSより) 食べようとするケーキを奪って「あなたのためだから」と言い放つ(終業ぎりぎりでドサッと仕事を渡すバージョンもある)。強く印象づける目的としては、このCMは大成功だ。心ざわつく嫌なメッセージとして、絶対忘れないから。人の為と書いて、いつわりと読む。これは、善意の皮を被せた、人をコントロールする言説だ。 不健康は悪なのか 本書を読み進めているあいだ、何度もこの「あなたのためだから」が頭をよぎる。おっぱい育児を推進する全米授乳キャンペーンの話や、ヘルスケア用語に覆い隠された肥満嫌悪、「ポジティブであり続けること」を強要される癌患者、大人の事情により創出される精神疾患など、「健康」という言葉に隠されたイデオロギーが、グロテスクなまでに暴かれる。
健康づくりは社会環境の整備から、という理念に基づき、世界保健機関は「すべての政策に健康の概念を(~Health in All Policies: HiAP)という言葉を使います。これが出たとき「これは健康帝国主義(Health imperialism)だ」という批判がでました。つまり、健康をまもるために、時に他の政策を犠牲にしてまでがんばれ、というような押しつけになりかねない、という貴重な警告です。
21世紀に入ったとき、厚生労働省は「健康日本21」という国民運動を始めました。目標値を決め、国民みんなで努力して健康になろう!という運動です。これに対して、某医学部教授は「健康のためなら死んでもいい」と言わしめる政策だ、と揶揄しました(うまい!、座布団2枚、とその時思いました)。
健康日本21が出たとき、医者として駆け出しだった私も、とても違和感を覚えました。健康を押し売りしてるんじゃないか?と。
健康は幸福になるため、人生の目標をかなえるための手段であって、それが目的化してはいけませんね。
そして、巷の様々な「健康商品」。これは、健康に関する不安をあおって、製品を買ってもらうことが目的です。「健康」という、だれもが気になり、失うことに恐怖心を持っていることがらを巧みに使って、買わせるわけです。「これ買わないと、健康が損なわれるんじゃないか?今の健康不安が解決するんじゃないか?と過剰に健康を意識させたいrして、買わせます。
この記事が言うように、疑ってかかりましょうねー。
ヘルスナッジは、そういう戦略に騙されないように・・・という気持ちから始まったプロジェクトですが、これも「ヘルス=健康」を広めようとする活動には違いありません。私たちも、自分たちの行動がすべて正しいと思いこんではいません。時には疑いの目を持って読んでいただき、疑問や批判があったら投げかけていただきたいなと思っています。
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Toshinari Watanabe
大切な視点ですね!
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田淵貴大
大阪国際がんセンターがん対策センター 疫学統計部 副部長 医師 博士(医学)
健康になるとの根拠に乏しい「健康志向商品」については疑ってかかるべきです。それがこの本のコンセプトの一つだと思いますが、表紙はいけませんね!タバコは、健康だけでなく、社会的にも明らかに根拠を持って有害なものです。疑ってかかるべきものが多いですね。
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