「せっかく治療した人々を、そもそも病気にした状況になぜ送り返すのか」世界医師会長マーモット医師の就任演説全文
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日本医師会 2016.02.09 UPDATE
(日本医師会より) 2011 年 5 月、メアリーは首をつりました。彼女の遺体は、カナダのブリティッシュ・コロンビア州の先住民保護区にある祖父母の家の庭で発見されました。メアリーは 14 歳で、ファーストネーションと呼ばれるカナダ先住民でした。 自殺の場合すべてそうであるように、彼女にはいろいろな事情がありました。メアリーは、家庭でもコミュニティでも肉体的・精神的に虐待され、性的虐待も受けていた可能性もあります。彼女の母親は精神的に不安定で、子供の首を「ポキっと折ってしまえ」と告げる声が聞こえていたそうです。当局は、メアリーの自殺は児童福祉制度の機能不全によるもので、誰も彼女の虐待の訴えを真剣に取り上げず、行動もとらなかったことが理由であるとしました。
「メアリーは首をつりました」という衝撃的な一文からはじまる、サー•マイケル•マーモット氏の世界医師会長就任演説の全文が日本医師会のウェブサイトから公開されました。日本語訳です。とても読みやすく、上手に訳されているなと思いました。
世界にはとてつもない命の格差、健康格差があります。平均寿命は最長の日本と最低国の間にいまだに40歳以上の開きがあります。これは仕方ないことなのでしょうか。マーモット氏の演説からはこの不正義を正さなければいけない、という強い意思と使命感、そして怒りのような感情を感じ取ります。
マーモット氏のスピーチにはいつも英国紳士のユーモアがあふれており、なんどもクスリと笑わされます。会議の発言でもそうです。でもこの演説は違います。彼が会長として何をしたいか、何をすべきかに対する強い想いを伝えるために、あえてジョークを控えたのかな、と思いました。
マーモット氏の今後の活躍にとても期待しています。
ちなみに世界医師会とは、各国にある医師会(医師による職能団体)の連合組織です。人を対象とした医学研究の倫理規定であるヘルシンキ宣言の策定などが有名です。
http://www.med.or.jp/wma/helsinki.html
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近藤尚己
東京大学 大学院医学系研究科 健康教育・社会学分野 保健社会行動学分野 准教授 医師 社会疫学者
とても読みやすく訳されてます。オススメです。
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