認知症「前段階」、半数は回復…高齢者4年間追跡調査
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ヨミドクター(読売新聞) 2017.06.09 UPDATE
認知症の前段階と言われる「軽度認知障害(MCI)」の高齢住民を4年間追跡調査したところ、14%が認知症に進んだ一方、46%は正常に戻ったとの結果を国立長寿医療研究センター(愛知県 大府 市)の研究班がまとめた。MCIと判定されても改善する例も多いことを示す結果で、近く米医学専門誌に発表する。
「軽度認知障害(mild cognitive impairment: MCI)」は、健常者と認知症の中間にあたる段階です。認知機能の一部に問題が見られるが、日常生活には支障がない状態と定義されます。MCIから認知症に進展する人の割合は1年で10%と言われています。
Bruscoli M, Lovestone S. Int Psychogeriatr. 2004 Jun;16(2):129-40.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15318760
今回、国立長寿医療研究センターの発表によれば、MCIと判定された高齢者を4年間追跡調査したところ、14%が認知症に進んだとのことです。上記の文献によれば、4年で40%が認知症に進展しても不思議ではないところ、14%に留まったというのは、それほど認知症への進展を心配しなくて良い、ということかもしれません。
また、MCIと判定された高齢者のうち、46%は「正常」に回復した、とのことです。この点について、「認知症予防を目的にした運動教室を開くなど、大府市が高齢者の啓発に熱心なことが影響した可能性はある」との研究者のコメントがありますが、運動をおこなった群とおこなっていない群を比較した結果は示されていませんので、必ずしも運動効果があったとは言えません。
(論文原典が確認できないので、もしかしたら論文中でそのような分析がなされている可能性はあります)
この記事を見て真っ先に感じたことは、最初の調査段階でのミスジャッジがあったのではないか、ということです。つまり、本来はMCIではないにもかかわらず、誤ってMCIと判定されてしまった人が相当数いたのではないか、ということです。
例えば、住民対象に血圧測定をしたとします。すると、普段は正常血圧の人の中に、高血圧と判定される人が出てきます。彼らを再測定すると、正常血圧に戻る人が相当数含まれます。これは、血圧が正常化したのではなく、初回にたまたま血圧が高かっただけです。まったくの偶然かもしれませんし、初めての検査で緊張していたのかもしれません。再測定では、雰囲気にも慣れて、正常血圧に戻ったとも考えられます。
今回のMCIの判定においても、本来は正常なのに、たまたまMCIと判定された人が相当数含まれると思われます。変化した数値が、真の変化なのか、みかけの変化なのか、注意深く解釈する必要があります。そのためのプロセスが論文化であり、論文の出典のない記事においては、その信頼性を判断することは困難です。
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